ウガンダ・トラ死す

Jun-02-2008


 南博さんとのイベント情報を載せる時に訃報が重なるという事態が二連続となり、やや驚いています。ついさきほど、タレントであり、ドラマーであり、料理人である、ウガンダ・トラさんが亡くなった事を知りました。

 ワタシとウガンダさんとの関係を知るファンの方も、もうほとんどおりますまい(ウガンダさん自体をご存じない方も多いでしょう)。ワタシのTVデビューはウガンダさんのバックバンドのホーンセクションとして出演した「ひょうきんフェスティバル」という番組で、これは「オレたち!ひょうきん族」の、完全歌番組仕様の特番であり、その時我々が演奏したのはソウルクラシックばかりでした。ワタシに所謂ニューソウル以前のクラシックを仕込んで下さったのはウガンダさんです。

 六本木生まれの完璧な街っ子だったウガンダさんは、ジャズドラマー(終戦直後の日本のスイングジャズに精通されている方ならば、ご存知の方も多いと思いますが、ここでは「親父の名前は出さない」というウガンダさんのポリシーに従います)だったお父様と同じドラマーに成りましたが、お父様とは違い、どれほど日本のGS並びに初期ソウルに詳しい方でも、スリーチアーズ&コングラチュレイションズの名はご存知ありますまい。ウガンダさんがブレイクスルーを果たしたのはコミックバンドである「いそがしバンド」後のビジー・フォーです。

 ビジー・フォーはジャズ上がりのクレージーキャッツ、ファンク/ソウル上がりとパブリックイメージされるも、ハワイアンやロカビリーやカントリー勢が主流を占めていたザ・ドリフターズの次世代である、ソウル/ディスコ/R&B/オールディーズ・ポップスをバックボーンにしたコミックバンドで(グッチ祐三さん、モト冬樹さんが在籍していました)、所謂、「六本木のディスコのハコ」上がりの不良によって結成されました。「ハコ」文化の音楽性、風俗性が、年代と地域によってどう区分されていたか、などという話に興味がある若者は、そのうちこの国から一人も居なくなるでしょう。南さんの「白鍵と黒鍵の間に」は、その生々しい証言の一つであり、日本の、裏の芸能/文化史の血脈に繋がっています。

 ワタシがどれほどウガンダさんに可愛がられたか、くだくだ書く事は無粋ですし、ウガンダさん自身がそういう事は嫌いましたが、「菊地、オマエはジャズにいきてえんだろ?解るよ。ジャズメンの感じだよオマエは。オレたちみてえに、バカじゃねえ感じだ。有名になるよ。オマエは才能があるからな。有名になったらオレに奢ってくれよ。なーんちゃって(ボン!と背中を叩く)」と仰って下さったのにも関わらず、そして晩年はここのすぐ近所(大久保)で焼き鳥屋を経営されていた事も知らないまま、とうとうお好きだったビフテキの一枚、カレーライスの一皿もご恩返し出来ないまま逝去された事は、(本当に)悔やんでも悔やみきれません。

 明日、南さんの出版記念トークイベントがあるというのに、またしても湿っぽい話になってしまいました。しかし、ワタシが南さんを信用し、共演するのは、ただひたすらダンディでクールであるからのみではありません。ワタシも南さんも、現在では文筆かも兼ねるジャズメンとなり、いっぱしのインテリ先生の如しではありますが、共にハコバンの経験者であり、コミックバンドの経験者であり、営業やショクナイの経験者であり、南さんのお言葉を借りれば、歓楽街で男に成ったのです。

 つまりワタシは、ハコ経験によって、年長の悪い先輩やチーママや酔客や任侠道にある方からなどの人生教育を受けてない者は、どんなにワルぶっても、どんなにプアぶっても、どんなにキチガイぶっても、ジャズだろうとノイズだろうとロックだろうと、青臭いお坊ちゃんの手慰みであるとハナから決めつけているバカなのであります。ウガンダ・トラさんのご冥福をお祈り申し上げます。

 

 

イブ/アスペルジュ

Jun-04-2008

 

 

 



 天国にモードの神のレジオンドヌールがあれば、彼のそれはグランクロワに昇格する事でしょう。実売は闇の中の伏魔殿だったモード界で初めて株式公開を果たした人物でもありました。訃報が三連続ですが、とはいえ個人的な重みは低くなって行きます。ステファノ・ピラーティーの才覚はショー演出、音楽家の選択も含め疑う余地がなく(少なくともワタシが拝見したここ4年間はほとんどハズレがありませんでした。詳しくは「服は何故」をご参照ください)、経営母体はグッチ。プレタ専門メゾンとしてのイブサンローランリヴゴーシュに危機感はありません(最新のショーは何と、山口小夜子リスペクトな、安室奈美恵さんの最近のPVみたいなショーでしたが)。

 しかし、(その生涯の中で授かった様々な賞の中でも特に)デ・ドール賞を受賞する名クチュリエにして、スリマン、エルバス、フォードの三天才を育て、ラガーフェルドと同期、クリスチャンディオールに認められた天才少年(あろうことか、あのデイオールに「私はこの子に自分の才能を認めてもらいたい」と言わせた事は有名です)あがり、そして、アルジェリア戦争の被害者(戦場PTSDで精神病に入り、前近代的な電流治療を受けています)という、神話にも似た履歴を持つ最後のグランクチュリエであり、21世紀モード世界の激変は加速されている感がありますが(ブラックミュージックの参入と幼児化は劇的に進むでしょう。と、これは慶應の講義で本日やったことですが)、先人達の遺志はある意味で音楽界よりも遥かに力強く受け継がれている感があります。イブ・サン=ローラン享年71。ご冥福をお祈り致します。

 と、こうして訃報が続きながらも、最近は「ノーミュージック、ノーライフ」の、あのポスターのモデルをやったり、モード系のブラックミュージックマグである「LUSSW Vol.4」に松尾さんとの対談が載ったり(凄くスマートでスムースなオトナの対談)、NTT出版の「インターコミュニュケーション」の最終号に後藤繁雄さんとの対談が載ったり(もう最終号なんだから何言っても良いだろうとばかりに、デンジャラスな話題しか出さなかった極悪対談。因にどちらも思っていたよりも写真満載でびっくり)して、はっきりしない季節を適度に楽しく生きている訳ですが、一日平均6回はタクシーに乗るタクシー野郎としましては、例のシートベルト条例により、一日の「なんか恥ずかしい度数」が急激に上がり、漫然と一日中頬を赤らめています。シートベルトをするのが恥ずかしい訳ではない。シートベルトを巡るあらゆるやりとり(ワタシと運転手さんの)が、なんか恥ずかしい訳です。「お客さんあのう、一応、一言だけ、お願いだけすることにしてるんですがね(う恥ずかしい)」「あ。すいませんすいません忘れてた。ははは。これ。ね。ギューンと(う恥ずかしい)」などといった。とまれワタシは適度の恥ずかしさを楽しんでおりますが、メタボおとうさまがたはタクシーの中でまで煙草は吸うな、痩せろとギュウギュウ言われ、誠に御愁傷様であります。おとうさまがたにおかれましては、セックスの回数を思い切って倍にする事をお勧めします。何よりも代謝と心肺機能が上がりますぞ。先日「5~60代の男性が一番自殺する」と聞いてのけぞってしまいました。遊び盛りではないか。拙作が役に立つのであらばいくらでもお使い下さい。それではごきげんよう。




 <キャプション>


 キャメラマンは平間至氏、同い年そして同じ「テレ遊びパフォー!」のマスター同士による記念写真。

 NMNLの「シリアスな方」のポスターシリーズ、08年サマーシーズンのモデルを務めた筆者。質問事項のラストである「現代社会で、あなたが表現者としてすべきこと、伝えたい事は何ですか?」という質問に「思春期と恋愛だけが素晴らしいという訳ではない。ということ」と解答。

 新宿三丁目再開発に向け絶好調のクレッソニエール。6月のフェスタはアスペルジュのフルコース。アラカルトでも行ける。ヴェールとブランシュとあるが、筆者のおすすめはブランシュのオランデーズソース。軽い絶望にも似た、濃厚な初夏の歯ごたえと初夏の香り。佳品。

 

 

 

アルバム情報

Jun-06-2008

 

 

 



 いきなり暑くなったりして、我々の自律神経に小憎らしい揺さぶりをかけて来ますなあ地球も。タクシートベルト問題は、ほんの数日で収束してしまいました。程よい羞恥は生き残りずらい環境に成って来たのでしょうか。

 とさて、マネージャーのブログに掲示されましたが、ダブセクステットのセカンドアルバムが完成(厳密には、天才宇川直宏氏のデザイン上がり待ち)致しましたので、簡単なご紹介をさせて頂きます。


 菊地成孔ダブセクステット・セカンドアルバム

 「Dub Orbits」(ダブ・オービッツ)



■発売日
(宇川くんのデザインさえ上がれば)7月16日

■価格
定価\3,000 (税抜価格\2,858)

■曲目 
1. I’ve lost my Taylor Burton (Naruyoshi Kikuchi)
2. Koh-i-Nur (Masayasu Tzboguchi)
3. Orbits (W. Shorter)
4. Despute (Masato Suzuki)
5. Ascent (J. Zawinul)
6. Monkey Mush Down (Naruyoshi Kikuchi)
7. Dismissing Lounge From The Limbo (Pardon Kimura)

Art Direction and Design: Naohiro Ukawa

Mastered by Tom Coyne (Sterling Sound, NYC)

All tracks Edit、Arrangement and All original tracks naming
Naruyoshi Kikuchi

Naruyoshi Kikuchi Tenor sax、CD-J、keybord、bongo drum、Whistle
Masayasu Tzboguchi Piano、chaospad、 <M>operation
Pardon Kimura Digitaleffects、chaospad、 Handmade analogue shynthesizer
Shinpei Ruike Trumpet
Masato Suzuki Bass
Tamaya Honda Drums

Produce Naruyoshi Kikuchi



 というわけで、今回の(「CD」としての)トピック1は、スターリングサウンドの右大臣、トム・コインがマスタリングした。ということでしょうか(E-マスタリングですが)。

 因にスターリングサウンドの左大臣、テッド・ジェンセンがマスタリングしたのが「Cure Jazz」(この時はUAさんがニューヨークのスターリングサウンドまで行ったんですね。ワタシはつくずくニューヨークに縁がないと思っています)で、世界的に有名な二人ですが、どちらも「日本人が作った/編集された/ハーフエレクトリックな」ジャズのアルバムをマスタリングした事は無い筈ですので、これでワタシは「スターリングサウンドの両巨頭に邦人ジャズのアルバムをマスタリングさせた唯一のアーティスト」と、唯一がまたひとつ重なってしまったわけですが、そんなチマチマした話(スターリングサウンドがじゃないですよ。ワタシの唯一撃墜マークの話です)はともかく、トピック2はやはり天才宇川直宏氏の投入でしょう。

 因みにというか当然というか、宇川氏は音を聞かずにジャケットを製作している訳ですが、宇川氏がジャズのアルバムジャケットをやるのは初めてですから、さきほど撤去した唯一がすぐまた戻って来てしまいまして、ワタクシ別に唯一である事が好きな訳でも何でもないのですが、先祖が唯一郎(これでフルネーム)とか、そんな名前だったのでしょうか。どんどん(要らぬ唯一まで)重なってしまいます。

 トム・コインも宇川直宏も知らない。という方も(信じたくありませんが、それが現実ですから)大勢いらっしゃると思いますが、検索すればドカーンと出て来る筈ですので、ご興味を持たれた方は情報をパズルの様に組んで楽しんで下さいませ。

 (宇川氏とワタシの、1年前に行った対談がいよいよ発売されます↓)

 http://d.hatena.ne.jp/nununununu/20080603

 

 カヴァー曲「オービッツ」は「マイルス・スマイルズ」に、「アセント」は「ディレクションズ」に収録されています。というわけで演奏内容は聴いてのお楽しみ、曲タイトルについては引いての(辞書を)をお楽しみ。という事で、辞書を引いても出て来ない単語についてのみ。1曲目の「テーラーバートン」と、2曲目の「コイヌール」は共に宝石の名前です。どんな宝石かは検索してのお楽しみ。ということで(すみませんこれは保証出来ません。日本語による情報が転がっているかどうか保証の程ではない)、こいつを抱えてライブアルバムのレコーディングと夏フェスに向かいます。それではごきげんよう。



 <キャプション>

 ジャケット撮影時にて。宇川家の、宇川氏をも超越する大スターTVちゃんと共に(撮影ジェナちゃん)

 ↑この写真が「風とロック」に掲載されるので、差し替えに成りました(同日別ショット)



「服は何故」WEB完成

Jun-09-2008


 昨日、歌舞伎町クラブハイツにお越し頂いた皆様に感謝致します。秋葉原では極めて現代的な事件が起っていたようですが、我々も負けじと極めて現代的なジャズをお届けしていた訳でありまして、こうして現代性というのものは右から左、清から毒、呉から越、犯人から芸術家まで様々な形があるのだという前提的な認識がなされた日曜日になったとも言えるでしょう。酷い世界を素晴らしい世界に変えるのではなく、酷い世界と素晴らしい世界は常に混在している。という原理を受け入れる(モードという概念は、ここから発しているのではないでしょうか)ために犯人と芸術家は存在しているのであります。

 とさて最近「菊地サンの散財の話が読めなくて詰まらない。お買い物のお話を書いて下さい」という、ショッピング/デパート派ファンの方からのお声を頂戴するのですが、ここのところとんと買い物に行く機会が無く、最近伊勢丹でした最も大きな買い物が「kamipro」編集部への付け届け用のアンリ・ルルーのカラメルブールセル6袋(伊勢丹滞在時間3分)という有様。伊勢丹地下を近所の駄菓子屋感覚で使うというのも悪くは無いとはいえ、ご期待には添えないでしょう。というわけでちと変化球ですがこれは如何でしょうか?値段を出すのは無粋ですが締めて約○○万円也。昨晩打ち上げで飲み干した、菊地提供によるワインの総額です。

 といっても、その半額は1本に充当されています。貴腐葡萄ワインの極点、あのハンニバル・レクター教授が、買い付けリストに名前が載る事で身元がばれ、捕まってしまうというリスクを犯してまで手に入れようとしたシャトー・デュケームの91年。ローのフォワグラを3ミリ角ほど口の中に入れ、舌で押しつぶし、そのままこれを流し込んだ瞬間の感覚を記述するのは、通常の知性、脳の働きでははなはだ困難であるとしか言いようがありません。

 それは極楽であるとか、濃厚で透明で完璧なデカダンであるとか、死と再生であるとか、いくらでもそういった事ではあるのですが、むしろこれは直接接触の無い性行為そのものであって、向かい合って同じフォワグラと同じシャトーデュケームを口の中で溶かしている状態と言うのは、相手が恋人と言わず、同性と言わず、見知らぬ人と言わず、複数人と言わず、それが誰で、何名であれ、完璧なグルーヴを捉えたセックスの最中とまったく同じ状態に成り、しかもそれは前提であって、つまりはそこから始まり、その上に言語化不可能な、静かで重厚で、極限的にエレガントな贅が、シフォンや建築を思わせる程に重層し、時は止まり、永遠かと思われるほどの余韻を引くのである。というのがワタシの拙い筆力の限界ですが、演奏中のある瞬間、完全な一体感の獲得時に似ています。ジャズとはこうした、発生時間と発生価値を捉え、人間を深部から衝き動かして変化させてしまう、即興演奏という営為の芸能化で、料理と言う物が栄養摂取の芸能化であることと対応しています。

 何れにせよ、これは買い物の悦楽とは随分違う様です。次の演奏までの間にデパートに出掛けなくてはいけませんなあ。とここまでは我ながら見事なまでの前振りでありまして、本日はサイトのご紹介です。著者認定の公式。という意味では当サイトと提携関係にあると言っても過言ではありません。特に、「服は何故音楽を必要としているのか?」の読者の皆様に於かれましては、必読とか朗報とかいった大袈裟で軽い言葉よりも、完璧な視聴覚資料室が出来たので、倍以上楽しむ事が出来、実質上、書籍の価格が半額以下になりましたぞ。と、良く読まないと意味が通りにくい言い方をした方がよろしいかと思います。





「服何故音楽web」

http://ksuque.blog.drecom.jp/archive/278




  *     *      *      *      *




<制作者様よりのメール>


菊地 様

blauや、千葉レーダの須永です。

先々月にご相談した

服何故音楽webの件ですが、
どうにか、形になりましたので、
ご報告致します。

意外と拾えるなあ。というものから、
何故これが無いのだ。というものまで色々思いながら、
リンクを作成しました。

兼高かおる世界の旅のOPが拾えただけで、もう十分でございます。やった甲斐があるなあ、みたいな。

youtoubeなので当然ですが、著作権者からの要請によって消える可能性が、多々あります。


一見、アーカイヴのようで儚い


というのが、良いかなと思います。


 *     *     *      *     *


 

 「東京大学のアルバート・アイラー」を出版した際、やはりこうしたアーカイヴを製作して下さった方がいらっしゃり、拙著がかなり立体的にお楽しみ頂ける様になった。ということがありまして、これからの時代は、視聴覚メディアを扱う専門書は、すべてこうしたアーカイヴを著者ないし準著者が製作し、読者と前読者へのサーヴィスにして著作の補完テキストとして提供すべきであるとすら思ったものですが、ご存知パソコン音痴の検索下手でありまして、「M/D」と「服は何故」については、有志の方どなたかやってくれませんかとアナウンスした所、早くも「服は何故」版が出来上がったという訳です(制作者である須永慶祐氏とワタシの関係については同webで知る事が出来ます。まあ、平たく言えばファンの方。なのですけれども、懐かしの「チアー&ジャッジ」常連さんですね)。これを観て本が欲しくなり、買った。という方は当サイトファンメール宛のアドレスにその旨書いてお送り下さい(ウソやっちゃいけませんぞ)、印税の一部から私設宣伝費として須永氏に謝礼を支払わせて頂きます。

 と、現在ちょうど「服は何故、音楽を必要としているのか?」の単行本出版後の連載2回目(現在発売中の物は、栗野先生との対談が掲載されています。こちらも併せてどうぞ)を執筆中の菊地でした。クラブハイツ公演の感想メールとフォワグラ&シャトーデュケームの余韻(フォワグラだけではありません。プレーゴプレーゴ金子シェフ渾身の見事なフルコースでした)、演奏中の記憶が邪魔をして、なかなか筆が進みません。それではごきげんよう。

 

新宿渋谷秋葉原

Jun-13-2008



 昨日は私用(ダーガーの映画をもう一度スクリーンで見るため、杉原支配人に会いにコンコンブルに行くためアンドモア)で、渋谷に行きました。仕事でアップルストア(インストアライブ等)やNHK、オーチャードホール、Bunkamuraルシネマに行くことさえ数ヶ月に一度。という頻度であるところに持って来て、純粋に私用のみで行くのは何年ぶりか。田舎から出て来たオッサンみたいな(というか、それそのものですが)事を申し上げますが、街を歩く若者達とくに女性の方々は栄養不良ではあるまいか?細く、姿勢が悪く、骨盤が歪んでおり、顔色が悪い(歌舞伎町平均比較)。まあ服とメイクとヘアは素晴らしい限りですが、余計な世話もここに極まれリですが、心配になってしまいますなあ。

 ワタシは通っていた音楽学校が池尻にあった都合上、音楽学生時代(83~86)は完全に渋谷の子で、現在サントリーCCレモンホールという、頭が狂っているとしか思えない素晴らしい改名を遂げた旧渋谷公会堂の前の植え込みに、朝まで遊んでいた学友と○○○のキメ過ぎで寝てしまい、目が覚めたら大変な人だかり、慌てて学友を揺り起こすと彼の手のひらには犬の糞が握られており、彼はワタシをして「オマエはすごい天才だ。きっとでっかい仕事をするに違いない。そのウンコは神からの授かり物だから大事に持ってろ」と言わしめた後、小比類巻かおるさんのプロデューサーになり、巨額の富を得てロスにスタジオ付きの豪邸を。「菊地、今でもあのウンコは持ってるよ。すっかり乾燥したけどな。見せてやるから遊びに来い」というメールが一度だけロスアンジェルスから届く。といった青春の甘酸っぱい思い出が山ほどあるのですが、何だかどういうわけか、ワタシは生まれもってのギンジュク(銀座~新宿)系らしく、そもそもすり鉢状に谷底になっている土地と言う物が苦手で、大嫌い超苦手と言う訳ではないのですが(松濤あたりとか109とか、好きな場所もたくさんありますし)、心身がどうにも拒否反応を示し、自然に足が遠のいてしまうのであります。

 ですから、「渋谷系」というものが勃興した時、その音楽性は良いとしても、「全世界同時渋谷化」といった、それはそれは恐ろしいスローガンが掲げられた事があり、そんな事が起こるのかと怖気(おぞけ。と読みます)が震ってしまい、花園神社の宮司さんにいくらか包んで「お願いですから結界を張って下さい。ここが渋谷になったら気が狂う。壷中天あり意中人あり腹中書ありと申します。祓いたまえ浄めたまえ神ながら守りたまえ幸いたまえ」などど、安岡正篤まで引用して嘆願に上がろうかと思った程なのですが、どうやらそれは杞憂に終わり幾星霜、気がつけば生活空間も新宿~銀座に定着し、完全なるギンジュク系となってから明日6月14日で5年目を迎えます。皆様ご存知「副都心線」の開通は、ワタシが歌舞伎町に越して来た日を記念して東京メトロ側が10年前から着工していたもので、東京メトロ様の粋な計らいに感謝致します。特に「新宿三丁目駅」は出口が花園神社から南口の高島屋前までカヴァーされた、ワタシの生活圏の心臓部に位置する駅でありまして、ご存知ブリッコラ、プレゴ・プレゴ、クレッソニエール(皆様大挙して各店を楽しまれた様で、大変結構です。青葉も含め「先日は有り難うございました」と、氷菓子などをサーヴィスされ、大変良い気分であります←サーヴィスされたから。ではありませんぞ。皆様がワタクシ行きつけの銘店を御堪能された事が。です念のため)はまたしても「Hanako」の最新号、「副都心線特集」にてラインナップされておりますが、この地域の再開発は凄まじく、現在、高級中華の銘店が集中し、繁盛しつつあります。何かの機会にまたご紹介しましょう。

 さて一昨年になりますが、NHKの「ポップジャム」に出演した際、渋谷の街を歩かされまして「これから渋谷はどうなると思いますか?」等と質問されるコーナーがあったのですが、その際「既に渋谷にはアキバが混入しており、その拡大は誰も防げないだろう。日本の都市は、油断するとどこでも亜種アキバ化する可能性を持っている」といった旨発言しました所、番組オンエア後タッチの差で勃興した「アキシブ系」を捉えた先駆的発言。などと蒙昧な過大評価をされまして「アキシブ系コンピ」とやらに参加してくれ(小西さんも参加してるし!といったアナウンス付きで)。というオファーを頂戴したので丁重にお断り申し上げたのですが、これでは「全世界同時渋谷化」どころか「全世界同時アキバ化」であります。

 TVは時折出るだけで、ほとんど観ないワタシですが、たまに夜中にNHK等を観ていると、詳しいジャーゴンやテクニカルタームは全くわからねども、どう考えても、不必要なまでに萌え記号が入っている番組ばかりで「スタッフ全員がヲタクなのではないだろうか?」と思いますので、なるほどこれではアキシブ系さもありなん&やむなし。何せNHKがアキバに心を奪われているのだから。と、まあ、これは如何なる誰に対する誹謗でもありませんが、この時のワタシのキブンが何に一番似ているかと言えば透明な悲しさです。過去、西武文化というものの跳梁によって日本中が原宿駅前みたいになった。と嘆かれた時がありましたが、その時の悲しさは(自分が若かった。ということもあり)中途半端に不透明な生々しさがありました。

 ワタシが失われ行く60年代社交文化の砦の中でああしたジャズを演奏していた頃、厳密にはマチネの為に久しぶりで午前中に起き、フラフラしながらサウンドチェックをしている最中に、あの事件は起りました。若者が絶望し、この世など無くなってしまえと思う事は健康の証しですし、マンガばかり観る事で美醜の感覚が極端化し、自分を醜いと自己規定してしまう愚かさも伝統的な物です。銃器が入手出来ないかわりに刀剣類が容易く入手出来るという状況はかなり長い歴史を持っており、顔相的には宅八郎氏ですから、何も目新しくは無い。携帯サイトの有害な面も多分に含んでいますが、闇サイトで知り合い、金欲しさに人殺しをする。といった極端な有害性よりは低く見積もっても問題ないでしょう。

 この事件に何らかの現代性があるとしたら、第一には「たくさん殺しても(すくなくともすぐには、あるいは「上手く行けば永遠に」)死刑にはなんねえんじゃね?」といった見込みが犯人から抜けなかったのではないかということです。

 彼の年齢だと、大量殺人の犯人に死刑が執行された例を見聞きする経験は無く、名だたる極悪半全員が何年もムショの中にいるままですし、やれ精神鑑定、やれ死刑廃止論者と、細かい事は解らぬが、自分に有利そうな(甘い読みの出来る)ファクターばかりが目につくでしょう。彼の時間感覚で言えば7~8年の猶予もあれば、それは「やっても死刑に成らなかった」という事とイコールで、おつりがくるほどではないでしょうか(告訴を一杯抱えているが、家に捕まえに来ない限り、裁判には出ない。というひろゆき氏のライフスタイルや、そもそも匿名で好きな事を書いて、責任は取らなくて良い。というメディアの属性も基本的な影響力を持っていますが、こうした事は既に多くの人々に批評的に見つめられているので、直接的な影響力ではないと思います)。

 つまり犯人は「こんなことをしたら死刑になる。ならずとも死に値する領域に完全に入ったのだ」といった、自殺や死刑覚悟の自己表現ではなく「やっても許される(かも)」という、砂糖のように甘い読みに基づいたニュータイプだったのではないかと思います。

 アキバのホコテンというのはワタシは一度も行った事も無く、知人からたまに聞く噂(エアガンや露出行為の歯止めが利かなくなっている、一種のパラダイスだという、おそらくやや誇張されたもの)からだけの類推に成りますが、犯人にとってアキバのホコテンは、呪いの詰まった、汚すべき場所という側面(タクマに於ける小学校の校庭や、アメリカで頻発するライフル乱射事件に於ける高校の大食堂のような)もあったかも知れませんが、同時に「アキバのホコテンなら、解ってくれる(乃至、喜んでくれる/面白がってくれる/怖がってくれるetc)という、「許してくれる場」であったことが想像出来、これがこの事件の第二のネクストレヴェル性であって、つまり事はアキバだけではなく、現代性の推進は幼児性の進行に他ならないという、面白くも何ともない、在り来たりな結論です。

 あらゆる現代的な事件において、被害者はたまったものではありませんが、今回被害にあった芸大生は、ワタシの芸大の授業をサポートしてくれていた学生の先輩です。ワタシは「ほ~らヲタクは危ない、気持ち悪い、規制だあんなもん」などという気は毛頭ありません。そして、前述の「ポップジャム」より更に数年前、歌舞伎町に越して来てすぐに「カーサブルータス」(おそらく。記憶曖昧)に「歌舞伎町の良い所は、マスコミに結界が張られ、中が見えない所だ。秘密がある事によって守られる危険性は健全である。秋葉原は日本の文化の代表だとばかりに、軽躁状態で見せまくっている。こんな危なっかしい事はない。歌舞伎町も浄化と浄化と騒がれているが、併せてこんなに危なっかしい事は無い。秘密と危険がなくては、人類は夜を越す事が出来なくなり、滅ぶ」といった旨発言しましたが、鬼のクビでも取ったかのように「ほらみろいわんこっちゃない」等とふんぞりかえるのは、バカのやることです。

 それよりもワタシは、取り急ぎ「アキバ系のヲタク」という、余りにも杜撰なくくりかたでもって、何らかのライフスタイルを持った人々の集団を擬人化し、ワタシ個人との関係を規定するならば、路上でインタビューを受けた彼等が「こんな、こんな姿で殺される為に生まれて来たんじゃないのにね(涙)」だの「ばかやろー!(涙)」だの「こんな事件が二度と起らない様にしてほしいです」だの「ホコテンは止めてほしく無いですね。頑張って売り出そうとしている子とかもいっぱいいるんだし」だの言っている限り、同じ現代の東京を生きる者として、残念ながら全く尊敬出来ないですね(ワタシに軽蔑されようと、痛くも痒くもないでしょうけれども)しかし彼等がこう発言したら、ワタシは彼等を(個人的な好き嫌いとは別に。そして、発言の正当性とは別に。ですが)大いに尊敬するでしょう。

 「古来、先鋭的なカルチャー、それが定着した場所に危険が付き物である事は当たり前の事だ。70年代のパンクを見よ、90年代のヒップホップを見よ、ロンドン、ニューヨーク、ワシントンDC、デトロイト、ハンブルグ、モスクワ。どこにも命を落としかねない地区と文化はあった。今やアキバはそういった歴史に名を連ねたのだ。日本人は攻撃的な他殺意を持ちずらい国民性があり、そういった場所が日本で生まれる事は過去無かったが、自閉的な自殺意と結びつくや、こうした爆発的な暴力性が生じる事が定着し、その聖地がここアキバなのだ。ロックもヒップホップもなし得なかった事を、我々はドラッグさえ抜きでなし得たのである。アキバは無限に楽しく危険が無い子供達の遊園地であると同時に、後ろから刺されるかも知れない場所でもある。古来、遊園地のピエロがスラッシャーであった。という映画が何本あるか数えてみるが良い。遊園地はコドモの屠殺場なのだ。我々は商店街が何と言おうとホコテンを止めないし、そこに危険性がある事を誇りと諦めを込めて受け入れる。発展的に考えれば、パンクが観光パンク化したように、やがてアキバカルチャーも危険ではなくなるかも知れない。しかし、今はあらゆる意味で全盛期なのだ。これからアニソンは世界中のヒットチャートに影響を与えるだろう。しかしアキバにまだDr.ドレーは居ない。文句がある奴は来るな。今や家電品が特に安い訳ではない」

 東京は動いています。数時間後ワタシは45になり、更に数時間が経てば、新宿は渋谷からやってきた人々を大量に抱え込み、ギンジュク地区のインデペンデンスは揺れるでしょう。年頭に申し上げた事を年の真ん中で繰り返させて頂きます。乱世であります。サヴァイヴァル必要なのはナイフではない。それではごきげんよう。

 

 

未成年特集(自己申告)

Jun-17-2008




 クラブハイツの感想&誕生祝いのメールを多数頂戴し、本当に嬉しく思います。年齢性別によるマーケティング層の偏差が小さい。という意味ではサザンオールスターズやB’zに匹敵するのではないかと思われる訳ですが(規模は万分の1ですが)、さて今回は、慶應で行っている講義のメインテーマでもある「オトナかコドモか?」というポイントを重視し、「未成年者特集」であります。






 一日遅れですけど菊地さん誕生日おめでとうございまーす。僕の周りにいる45歳近くの人はみんな疲れててハゲてて楽しくなさそーなかんじですけど、菊地さんはバカなこともやるし音楽はヤバいしすげー楽しそうでやっぱかっこいいなーって思います。別に僕の周りの45の人に悪口言うわけないじゃないですけど。

昨日の日記に書かれてたこと、犯人よりは少し下、高3なんですけど、のやっぱりネット依存、2ch観覧者、アニメに関してはオタクとまではいかないまでも(あのー、女の子に萌えるアニメには詳しくないんです)平成生まれの基礎教養は一応身についてると勝手に自負してる僕から少し蛇足を言わせてもらうと、あの犯 人は多分ニュータイプじゃないと思います。僕らの年代でネットやってる人であんな事件を起こしかねない人はネットが切れちゃうのは恐くても死刑で死ぬのは全然恐くないんじゃないかと思いますし、少なくとも一生ネットができずに幽閉されるのと死ぬのだったら、絶対にネットができずに幽閉されることの方が恐ろしいはずです。彼があんなことしちゃったのは菊地さんが日記で書かれてた美醜の感覚が極端化、に関連してスペインの宇宙食にぼそっと書かれてた(古い本持ち出してすいません(?))「勝ち組、負け組の二極化」がのっかってると思います。美=勝ち、醜=負け、勉強できるor,and金持ち=勝ち、その他=負け以外の価値観が見出せなく なっちゃたんじゃないでしょーか。それの原因がどこにあるのか僕はわかんないですけど。何かの参考になれば幸いです(多分なんないですよねすいません・・・)。

 (中略。内容は恋の相談)

菊地さんのいろんな活動で直接的にでも間接的にでも、そういう価値観以外の面白いものをもっといろんな人が気づいてくれるといいような気がします。僕自身も菊地さんのいろんな活動楽しみにしてます。長生きしてわしわし活動してください。応援してます。フリーメール(PCやネットに疎いようですけどご存知でしょ うか?誰でも即座にとれる名前のとおりフリーなメールアドレスのことです)からで失礼しました。


 


 *    *     *      *       *  





 菊地です。お便り&誕生祝い有り難うございます。ワタシもハゲてはいますが、それはそれとして、ワタシは彼を「人類としてのニュータイプ」と言ったのではありません。「速報」にあるとおり、彼はオーディナリーであり、彼に移入し、よくやった。自分もやる。といた声が相次いだ事からも、まったくニュータイプではなく、あるセクトの一般的な姿であると思います。

また、彼が犯した犯罪すら、ワタシはほとんど新しいとは思いません。ワタシがニュータイプと言ったのは、「ああいう犯罪の犯人」として、自殺/死刑、つまりあらゆる意味で死を前提としていない。という点、発展的に「アキバでやれば解ってくれるのではないか(許してくれるのではないか)」と、犯罪現場そのものに母性の投影があったのではないか?というの2点を併せ、「犯罪史的にニュータイプ」だと言う事です。
アメリカの高校の食堂でライフル乱射する子達は、もう死にたい。死ぬんだと思ってやっています。ある事件では、犯人をアマレス部の猛者が取り押さえ、犯人は、そのアマレス部員に「お願いだ殺してくれ。殺してくれ」と嘆願しましたし、「死にたいけれども自分で死ねないから通り魔連続殺人を行って死刑にして貰いたい」という発展形もありましたし、最近の例だと、これは通り魔ではなくストーカー系ですが、長崎の猟銃乱射男は自宅付近の教会で自殺しました。

「やっても死刑にならないかも」「アキバをメチャクチャにしてやるつもりはなく、好きな場所で受け入れてもらいたい」とでも言った「物凄いシュガーさ」は、ですから三段論法的に言えば、(1)彼は特別変わった奴ではない(2)彼は通り魔事件の犯人としてはニュータイプである(3)なので、現代と言うのは、通り魔事件のニュータイプである潜在的な犯人がたくさん居る時代だ。と繋げる事が出来ます。

更に言えば、外国人が聞いたら驚く(エキゾチックに思う)だろう点に、彼がノードラッグであった点です。というよりも、この事件は「いい加減、たとえ話じゃなくて、本当に携帯/ネット/アニメ/ゲームがハードドラッグだという事を認識/規定しようよ」というきっかけになる事件かも知れません(ならないと思いますが)。

 70年代のニューヨーク市では、市内の死亡理由のナンバー1が「レイプと殺人」だった時代があります。あなたの年齢ではイメージすら湧かないでしょうからず「タクシードライバー」という映画を見てみて下さい。人類史は「社会的な格差により、個人的な問題やリビドーを抑えきれなくなり、世界等滅んでしまえノーフューチャーとばかりに凶行に及ぶ人々がたくさん、ある地域に密集している」という現象を途絶えさせた試しはありませんが、70年代のニューヨーク市は、ジャメイカだのハンブルクだのデトロイトだのワシントンDCに比べれば、現在の我々にも少しは馴染みやすいかもしれません。何れにせよ、我が国のそれも含め、7~80年代までの「個人による無差別殺人」は、政治テロのような計画的なものを除けば(ここでは政治がドラッグですが)、例外無く自殺&死刑覚悟で、そしてほとんどがドラッグのサポートを得ていました。

ドラッグを極めて大雑把に定義するならば「現実感を無くし、万能感を得られるので日常の憂さが晴れるし、脳の働きが非日常的になるので何かが解った(悟った)気などもするのだが、実際は何も無い。また、中毒や依存した場合の代償として被害妄想と無能感とあらゆる痛みに苛まれ、廃人に至る」ものであって、携帯/ネット/アニメ/ゲームは現代を代表するドラッグです。安価で高性能なのが手に入りますし、何せ国家にドラッグだと思われていません。ほとんどのハードドラッグが、発明され、流通され始めた当初はドラッグだとは思われていなかった。というのはドラッグカルチャー史の基礎ですが、そんな事まではあなたが知らなくても良いでしょう。そして「愛」や「金」や「宗教」もドラッグですが、余りにエッセンシャル過ぎ、携帯/ネット/アニメ/ゲームといった新興ドラッグの様なキレキレの勢いはありません。

「繋げなくなったら死よりも恐ろしい」というあなたの発言は、ハードコアなジャンキーの発言そのものです。金が無くとも、無宗教でも愛が無くとも、空虚だったり多少困ったリはするでしょうが「死ぬ程恐ろしく」というほどでは無いでしょう。我が国はマリファナひとつ解禁出来ず、パソコンとネットは大盤振る舞いである社会ですが、一方でこれも実に日本っぽい話なのですが、「やばいとなったら手のひらを返した様に徹底的に取り締まる」というのも我が国の姿ですから、携帯(以下略)がドラッグだという事の確認/立証/看做があったら規制されると思うのですが、認識されない限り規制はありません(在刑法定主義が云々、といった司法の議論は何の役にも立ちません。それがドラッグだと認識されるかどうかだけが総てです)。何れにせよ「ネットをマリファナ並みに規制する」という事になったら、日本でおそらく初の、100%本気でガチガチなデモを見る事が出来るでしょうし、場合によっては暗殺なども見れるでしょう。

ワタシはドラッグ渦巻くジャズの世界の住人であり、書き原稿の持ち込みではなく、ホームページへの書き込みが目に留まって文筆家デビューした物書きですから、ワタシのこういった話は信用してほしいのですが、あらゆるドラッグは、適度にやれば長生き出来、やりすぎて依存や中毒を起こせば確実に破滅(無関係な他人も巻き込む、破滅以下の破滅も簡単に起ります)します。ワタシは職業柄、というか、自我の都合により、現在はあらゆるドラッグのうち、いくつかはまったくやらず、いくつかは適度にやり、いくつかはかなりハードにやりますが、そういうコントロールは痛い目に合ったり、加齢によって衰えたり賢くなったりする事で出来るもので、若い頃は何でもかんでも臨死寸前までムチャクチャにやっていました。可憐極まりない話です。

なので「適度にやるのが良いっすよドラッグは。やりすぎると死にますよ。死よりヒドイ死ですよ」以外言う事はありませんし、こんな、何も言っていないに等しいコメントは出す価値もありません。ただ、現代人は、極めて大雑把に「労働」という1セット制から「労働/趣味」という2セット性を経て、現在「労働/趣味/ネット世界に接続」という3セット性に生活時間の区分を進化させていますが、そのうちのひとつがドラッグなのだという事について、一般的な認識が無さ過ぎると思います(たとえ話で「ネット中毒」とか「アニメはドラッグ」とか言っても、それは認識からむしろ遠くなります。普通にトルエンやコケインやアンフェタミンの様にドラッグなのだ。と知るべきです。アキバの彼は21世紀の川俣軍司なのだ。と言っても、お解りにならないと思いますが)。

恋の悩みに関しては専門外ですので、いささか無責任な事を言いますが、告白すべきだと思います。告白して上手く行っても、断られても、同じ事です。告白するかどうかは、結果の如何ではなく、告白するかしないかのみが問題であって、告白しない理由というのは「振られたら傷つくから」以外に想像がつきません。傷つくのがイヤという理由だけで告白が出来ないのであれば、それは生きていないのとほぼ同じです。傷ついて初めて時間と空間は生じます。傷つくのを回避する人からは時空間が消え、自殺以外やる事が無くなる訳です。勝ち負けが世界を支配していると言うのは間違いではありません。問題は、勝利がどこにあるか、敗北がどこにあるか深く知る事です。


      *      *      *      *  


     
 お返事くださってありがとうございます。僕のメールはやっぱり菊地さんの参考にはならなかったみたいですけど、菊地さんが返信してくださったメール、僕には大いに参考になりました笑。菊地さんが仰っていた「ニュータイプ」っていうのは犯罪者として、なのですね。ネット依存というドラッグはひとつの原因なので しょうか?

少し話題が逸れて、というか自分のことばっか書いてしまうんですけど、小学生からネットを使ってる身としては、数日前の「速報」(訂正もありがとうございます笑)にもお書きになってたとおり、「ネット=ドラッグ」はもちろん気づいてはいる、というよりは身をもって知っているんですけど、改めて指摘されるとや っぱりとても痛い指摘です、僕もそのドラッグのジャンキーなので。ただ僕は、ネット依存症で社会生活に支障をきたすほどには、なんとかいたっていないことですし、菊地さんが返信して助言してくださったので、これを機会に助言通り傷つくことを恐れず好きな女の子に告白して(ネット依存から脱するためじゃないですもちろん)、今よりももう少しヘルシーに、楽しく生きていく努力をしたいと思います

(中略)

僕「ご自愛ください」を自分で自分に言うつもりはなかったんだけどなあ笑


「勝ち負けが世界を支配していると言うのは間違いではありません。問題は、勝利がどこにあるか、敗北がどこにあるか解るかどうか」の「どこか」のみならずこの問題自体もいまいちわかってないんですけど、返信くださったメールでよくわからないことがあってなんか嬉しいです。ゆっくり考えてみます。フリーメール、 以上に無礼な匿名のメールに返信くださってありがとうございました。ネットで名前を晒すことにものすごい恐怖感があって・・・なので普段自分から発信したりはしないんですけど。僕の名前は○×といいます。下の名前は□△です。


P.Sまたいつかラジオ番組持たれるのを楽しみにしてます。









菊地成孔様

日曜のライブよかったです。
素敵な夜をありがとうございました。
歌舞伎町クラブハイツ、足を踏み入れるまでは
どうなのかなあと思っていましたが
あの円形の空間ごと東京から移動してしまった
ように思えました。

終演後、エレベーター前で優しそうな男性からどうぞ、と
差し出されたので「これがCool Struttin'か!」と思い、
フィルムパック入りのステッカーを素直にいただきました。
ハンドバッグに入らなかったので、左手に持ったまま
エレベーターを降り、路上に出て歩き出したら
たちまちホストクラブの呼び込みのお兄さんたち5人に
取り囲まれてしまいました。(どうやら別々の店の人のよう)
「ねぇねぇ、そっちだけじゃなく、うちの店のも見てよ~」
どうやら、ステッカーが他店(ホスト)のチラシに見えたらしくて
ばばばっと群がってきたようなのです!
他の菊地ファンと思しき女性も同じ目に遭っていました。
ちょっぴりドレスアップしていたせいで、ますます
客らしく見えてしまったのかもしれません…
(私は茶髪の男が好きじゃないので恐怖の一瞬でした)

ライブ会場の外にホストが大勢待ち構えているなんて
菊地さんはさすがだなあ、と思いました(笑)
コマ劇場横のご報告でした。
またぜひどこかでお会いしたいと思います。







 菊地成孔様

ガキ坊主です(19)すみません。噂にはきいてましたが
菊地さんのファンのお姉様方の
色っぽさと肌の露出(ギャルとかとぜんぜんちっげう)
とエレガントさにやられました。デヴィッドリンチみたいな音楽だなあと思ったんですが
(勘違いだったらごめんなさい)あんな世界本当にあるんだなあ。

美しいドレスアップ女性ファンと一緒に菊地さんは世界を作っているんだなあ、
かっこいいなあ。

と、思いました。背伸びする興奮を知りました。

僕とおなじぐらいの青年(僕がいうのは変だけど、そういうしかない)で、
僕よりお洒落な子がけっこういました。同じ感覚だと思います。僕は彼女がいるんですけど(以下略。年上の女性に目覚めたという話)

渋谷とフジと野音いきます。








菊地成孔様

お初にお目にかかります。
先日の歌舞伎町クラブハイツのライヴを幸運ながら
愉しむことができた者で御座います。

当方、未成年の分際であのような、それこそ
エレガンスの塊のような処に身を置けたことが、
かけがえのない素敵な記憶となっております。

所謂ジャズライヴも始めてだったのですが、
人生で一度しかない初めてのジャズライヴ、という経験を
DUBSEXTET at 歌舞伎町クラブハイツで迎えられたことを幸せ、
と感じられる素晴らしいライヴでした。

野性的かつ官能的な音楽で躰の血液が
駆けめぐるのを感じることができました。

ジャズについての知識と云うものは皆無に等しい私では
ありましたが、これから少しずつ知識を身につけながら、
またライヴに足を運びたいと思っております。

本当は渋谷のスタンディングライヴにお邪魔させて
頂きたかったのですが、生憎、学校の合宿でした。(なんという事でしょう)

またライヴで菊地様の音楽にお会いするのを愉しみにしております。
乱文、失礼致しました。



追伸
私、菊地様が前年度、講師を務めておりました東京芸術大学の楽理科に今年度、
入学致しまして、自分勝手に今年度菊地様の授業が受けられる、などと
期待しておりましたところ、今年度は開講されておらず大変残念で御座いました

(教授に問いただしたところ、授業自体は隔年での開講のようですが…。)
いつか菊地様の授業を受けられることを愉しみに、淡い期待を持ちつつ待ってお
ります。




 菊地成孔様

 母(43)と伺いました。わたし(19)は加齢が怖いのですが、菊地さんの音楽(特にライブ)に触れると怖くなくなります。加齢なんて無い。と信じている友達が多いのですが、無いと信じているのはダメだと思います。「8 1/2」も観て、やっぱり加齢が楽しみになりました。菊地さんはとても素敵で凄いけど、何で菊地さんと同じメッセージをくれる人が他にいないのか不思議です。パリとかではどうなんですか?携帯から失礼しました(モード学園の新宿派です)。




 
 と、情報や掲載誌、写真等なども溜まっているのですが、明日以降ということで、本日はこれにて失礼。ごきげんよう。





       *    *     *     *






「服は何故音楽を必要としているのか?」のサイトが完成しました。



「服何故音楽001」
 http://ksuque.blog.drecom.jp/archive/278

 

 

2人の生き証人(現在タクシー)

Jun-19-2008




 ちびりちびりと猪口でやるようにして、誕生祝い&クラブハイツ感想メールが届き、なんとも良い調子であります。有り難うございます。先日、一日の最初に乗ったタクシーの運転手さんが1960年代にコマ劇場で踊り子のシュミーズを作っていた人(鍋底景気や神武景気、ガチャマン景気の経験者。ガチャマンとは機織り機がガチャンと一回動くたびに1万円の収入に成ったという意)で、それを降り、仕事をして、次に乗ったタクシーの運転手さんが1980年代にカンタベリーハウス(ディスコブームに於ける新宿の拠点。バブル景気の経験者)で会計をしていた人だったので、腰を抜かしながら即インタビュアと化し、新宿の過去について2連続レクチュアを受けた菊地成孔であります。

 職案通りはコマ劇場が出来るまでは「鬼王通り」と呼ばれていたとか、歌舞伎町のラブホテル街は70年代までは有刺鉄線が張られたうす気味の悪いゾーンだったとか、都電は大ガードの下で終点だったとか、当時のカンタベリーハウスに於けるみかじめ料はどういう形態で支払っていたとか、丸ノ内線が新宿に乗り入れた日は、一日でチェーン全体の売り上げが一億売ジャストだったとか、いろいろ勉強に成りましたが、お二人とも「札はこんなでかい革袋にどんどん突っ込んで、足で踏みつけてロープで縛らないと集金出来なかった。レジは全部破裂した。一個位パクってそのまま実家で店を始めた奴がいくらもいた。訴えても面倒なので全部看過」と仰っており「ヒロポンとかシャブとかやってなかったんすか?」と伺った所、お二人とも判で押した様に「ああいうのはやらないの。現実のがすげえもん」と仰っており、「景気が良かった頃を知ってる人間は、逆に不景気平気なの。不景気しか知らない奴はおかしくなるよ」「煙草のケムリは、他の嫌な匂い消してたんだよ。今の方が小さい子に、車が変な匂いがするって言われるよ。葉巻やブランデーの匂いと年寄りの匂いは混じると良い匂いなの」「パソコンがダメだ。パソコンが出来てから客もみんなおかしくなった。オレたちは未だに無線だ。わははははは」という至言を頂戴するに至り、これは神が我に与えたもう啓示なのではないかと思った訳ですが、「歌舞伎町が浄化されたら、ニューヨークみたいにテロ野郎が突っ込んできますかね?」という質問には、お二人とも「ああ、その通りだね。やられるね。うっはっはー」と殺気立った顔で嬉しそうに即答されていました。以下情報ですごきげんよう。




 <イベント情報>

 「服は何故?」がウエブ展開しておりますので(担当の本間サンも向編集長も腰を抜かしている「服何故音楽web」http://ksuque.blog.drecom.jp/archive/278 )、負けじと「M/D」は生トークライブを開催します。↓


GOTANDA SONIC presents
■■  LIVE M/D vol.1  ■■

日程:6月26日(木)
会場:ゴタンダ・ソニック(事前予約80席+当日立ち見30名)

   http://www.gotanda-sonic.com/

open 19:00 / start 19:30

fee: 2000yen + 1 drink order

talk: 菊地成孔+大谷能生+高村是州

 この春、776ページという破格のマイルス・デイヴィス論『M/D マイルス・デューイ・デイヴィス3世研究』(エスクァイア マガジン ジャパン)によって、ジャズ界に留まらず批評界全体を揺るがした菊地+大谷タッグが送る、ライヴ・クリティック・セッション。「マイルスについて、まだ半分も語っていない」と豪語するふたりが、『M/D』で天才的な分析を披露したファッション評論家、高村是州とともに、残り半分の“一部”を語り下ろします。

 前半の第1部では、マイルスの生きた時代の黒人音楽とファッションの関係を振り返りながら、その中でマイルスがいかに特異点的だったかを、写真、映像資料を駆使して分析。つづく後半、第2部では、その後ヒップホップの台頭を経た現在の状況から、今後音楽とファッションの関係がどうなっていくかを大胆に予想していきます。終演時間は未定。終電くらいの時間で一度終了しますが、もしかしたらその後さらにボーナストラック・トークがあるかも?? ディープな一夜となること請け合いです!

【ご予約について】
本イヴェント、着席観覧席80名様分のご予約をメールにてお受けします。
件名を「6/26 LIVE M/D予約」とし、本文に「お名前/電話番号/メールアドレス」をご明記の上、下記アドレスまでメールをお送りください。

taguchi@gotanda-sonic.com
(受付締切:6/23(月)24:00)

*申し込み多数の場合は抽選となります。メールをいただいた方には、24日(火)中に当否をご返信させていただきます。抽選に外れてしまった場合は、申し訳ありませんが当日販売の立ち見席でのご参加をご検討ください。

*また、当日券は数に限りがございますので、満員の場合、入場をお断りさせていただく場合がございます。予め、ご了承ください。

本イヴェントのお問い合わせ:
ゴタンダ・ソニック taguchi@gotanda-sonic.com


【ゲスト・プロフィール】
高村是州 たかむら・ぜしゅう
ファッション・イラストレーター。1964年広島県生まれ。東京学芸大学教育学部を卒業後、桑沢デザイン研究所ドレスデザイン科を卒業。雑誌、アパレル・メーカー、広告などのファッション・イラスト、デザインを手掛ける。2007年より文化女子大学准教授に着任(ファッション画研究室)。1997年に高村が上梓した『ザ・ストリートスタイル』(グラフィック社)を手に取った菊地、大谷は、音楽とファッションの歴史をリアルかつ詳細に捉えた記述に感嘆し、同書を東京大学講義の準教科書に指定していた。アトリエ「CUBIS(キュビス)」代表。http://www.zeshu.com



 このイベントはシリーズ化し「ライブM/D 2 濱瀬元彦」「ライブM/D 3 中山康樹」と続きますのでマニア諸氏に於かれましてはお楽しみに!そして「菊地さんのおしゃべりなら何でも(何も知りません)」みたいな方々に於かれましては、勿論来るなとは申しませんが、来ても解りませんよ話。解った気になっているのはワタシの巧みな話術に騙されているだけで完全な誤解です(笑・すみません世の中そんなに甘く無いのであります)。解ったフリで微妙な微笑みを2時間以上続けて下さるのであれば有り難いのですが、最前列で欠伸されたりウトウトされたりすると気合い充分のゲストの先生方に大変失礼(本当に)ですのでくれぐれもよろしくお願いします(笑)。





 <文庫本情報>

 何と、ワタシの書籍で最初に文庫化されるのは「サイコロジカル・ボディ・ブルース解凍」になりました。現在準備中。文庫版解説は坪内祐三さんです。ううう嬉しい。






 <ダブセクステットを踊りながら聴くのはどうしたら良いか情報>






 MC等で、デートコース(ペンタゴンロイヤルガーデン)の頃の様に、失神したり怪我したりする程の高熱のダンスフロアが出来るかの如く口を滑らせてしまい、紳士淑女の皆さんに恐怖感を与えてしまった感が有るのですが(シッティングでお届けする初日は既に残席僅少ですが、スタンディングでお届けする2日目はどちらかと言うと売れ行きが僅少です・笑)、勿論スタンディングのフロアを御用意させて頂いた限り、どれほど暴れて頂いても結構とはいえ、恐らくデートコースの頃の様な、戦場的なフロアには成らないと思われます(音楽の性質上)。

ワタシが観たいと思っている光景は、未だジャズ史、そしてクラブ史でも観た事が無い光景ですが、果たしてどうなるか、現在一番の楽しみでもあります。スーツはステージ上だけ。と言う事もあり得りますし、スーツを着たままダンス。ということが現出するかも知れず、また例えばハイモードであれば、スイムウエア(ロザッチャやゴアテックスなどなど)でも構いませんし、オイ系やブラック系のウエアとの相性も悪く無さそうですね。

 というわけで、メニューは両日とも同じにすると申し上げましたが、2NDアルバム「ダブ・オービッツ」のダンス指数が予定よりも遥かに高く成ったので、急遽予定を変更し、ほとんど曲が被らない、シッティング対応メニューとダンス対応メニューに別ける事にしました。お楽しみに。

 

  <「野蛮人の夜会」ペペ/スカパラ情報>

 既にお伝えした通り、完全アウェイで、会場の90%はスカパラファンの皆様だと予想されていたこのイベントですが、スカパラさんが当日、夢の島でのYMO関連イベントに出演してから日比谷に急行!ということで、調査報告によるとアウェイどころかハーフ&ハーフの模様です。

 ここでペペファンの紳士淑女の皆様には、是非、夏服に磨きをかけて頂きたく思います。これをもって、スカパラファンの皆様ならびに東京スカパラダイスオーケストラの方々への、我々と皆様からのホスピタリティ(おもてなし)としようではありませんか。ハイモードであればスイム(以下同文)、「真夏の夜のジャズ」のコスプレ系もイケまくり。ペペトルメントアスカラールが真夏の夜に屋外で演奏するという機会は二度と無いでしょう(年内は10月歌舞伎町クラブハイツと12月オーチャードホールだけです)。

http://www.sunrisetokyo.com/schedule/E000690-1.html




<キャプション>


 45歳になって最初のセルフポートレイト(ブリッコラにて)。14日に成った瞬間に一緒に飲んでいたのは何と、偶然道端で遭遇した新宿ピットイン店長、鈴木カンちゃんと、東京スカパラダイスオーケストラのテナー、柴崎コウとのミュージックステーションを終えたばかりのガモウ氏

 

 

 

テレビ観た?

Jun-26-2008

 

 

 

 
 「ラストフレンズ」の最終回に、あなたの故郷が出て来ましたぞと知りあいの青年に告げられ、ふふん、そもそも日活のマーク(NK)が浮かぶ所の、怒濤の波頭は銚子でR。70年代は東京から適度に近い事もあり、日本映画で海のシーンがあるといえば銚子ロケだったのでR。と、にわか郷土愛者となり、「でも、どうせ湘南みたいに見える所か銚子電鉄ばっかりでしょ。犬若食堂や銚子タクシーや市立病院が映るんなら尊敬するけどピュ~」などとタカを括って口笛を吹いたところ、「犬若食堂も銚子タクシーも市立病院も映りました(笑)」と言い返されて腰を抜かし「どんなドラマだよ!!犬若食堂最高だろうがよ!!!銚タクは制限速度時速10キロ!!市立病院は兄を除いて家族全員入院経験あり!!!」と倒れながら詰問すると、性的同一性の障害や虐待のTPSDや依存症といった現代の病理を埋め合う形で、友人だけの家族。というライフスタイルに行き着く物語。とのこと。(ドーン、ドーン。と)二度腰を抜かしてしまいました。

 「銚子にはそんなステキな場所ねえぞ!」「いや、だから銚子から東京に戻ってそのコミューンを作るのですよ。銚子は主人公が魚料理の店の仲居として潜伏するのです」「なるほどさもありなん。その店はきっと<かみち>だろう。<かみち>に決まっている。あすこは若い仲居さんがいーっぱいいるからな。平岡正明先生も<かみち>で料理を召し上がったんだ!どうだ!」「いやそこまでは解りませんでした」「そっちは解らなくてもこっちは解ったぞ。あれだろ。東京の下町に伝説の料理屋があって、女主人がちょっと田中祐子みたいな感じで、架空の下町弁を喋り、毎回毎回酔っぱらって従業員におんぶされたりし、団塊の世代を癒しまくるのだろう。そう。そこは、パソコンも携帯も無い世界」「それは別のドラマです」「だったらわかった!宇宙から来た鬼の娘が浮気性の男子高校生に恋をし、浮気されると腹のポケットからいろんな道具を出す。そう。そこは、パソコンも携帯も」「それアニメですよ。菊地さんのアニメ経験そこで終わってるじゃないですか。何十年前の話ですか」「ああアニメじゃないのか。だったらぜったい今度こそわかった!主人公は映画だと信じ込んでる。ね?でも実際は本当のヤクザの抗争なんだよなー。あの監督、ミュージカルの劇団やってたでしょう?ミュージカル愛してるんだったら、儲かってる今こそミュージカルやるべきだと思わない?あれにオマージュこれにオマージュみたいな、ねえ?感じだけど(小声で)意外と各方面に愛情薄いんじゃねえのー!ぎゃはははははははは!!!・・・・そう。そこはパソ」「それでは失礼します。ダブセクステットのセカンドアルバムはあんなに良いのに・・・」

 というわけで、テレビっ子だった筈なのに、今やテレビの話題ですらこの有様。今夜も近所の製氷工場の青年と副都心線はファックだという世間話でもしに行くか。それとも台湾式マッサージ青年達にアンリ・ルルーのキャラメルでも手みやげに、足の裏でも揉んでもらおうか。な菊地成孔(45歳)ですが、明日は大谷君&高村さんと共に、マイルスは元より、ブラックミュージックと服飾の歴史そして現在(NERDがヴィトンとザックポーゼンを二股かけている。といったエッジな部分)そして未来などについても話したいと思っています。一番来て頂きたいのは、ジャズファン、そしてモードマニアの男性ですね(今回、女性服はほとんど扱わないので)。女性は男装してジャズファンの振りをして下さい。それではごきげんよう。


 <情報>

1) ワタシ本人も把握しきれない程のスケジュールが

「マネージャーの速報」
http://ameblo.jp/naganuma/





2)音だけ聴きにいらしてもオーケーであります。

「ミッドタウン内<ガレリア>の選曲」
http://www.tokyo-midtown.com/jp/sound_scape/index.html





3)連載

「MTV」 *手に入れなくても大丈夫↓
http://www.mtvjapan.com/paper/


「フラウ」 *今回は「プーチンと硫化水素」次回は「<シュガー犯人>はどんな<格差社会>の犠牲者?」

http://watashi-frau.com/

「ファッションニュース」  *単行本出版を受けて更に拡大。「服はなぜ音楽を必要とするのか?II」スペシャル対談 菊地成孔×栗野宏文(ユナイテッドアローズ チーフクリエイティブオフィサー)

http://www.infaspub.co.jp/fashion-news/newest.html







4) ファッション業界でも話題騒然 

「服は何故、音楽を必要としているのか?」のサイト「服何故001」

http://ksuque.blog.drecom.jp/archive/278






<キャプション>

 このあいだ「ねえキャノンからいくら貰ってるの?」と真剣に聞かれた。

 12日だったのに。有り難う御座居ます(渋谷コンコンブル)にて。

 「三丁目のイタリアン&フレンチ戦争」は「クレッソニエール」「ブリッコラ」「プレゴプレゴ」の3強が変わらずリード、筆者のフィールドワークは現在「御苑沿い&御苑前のポスト・ヌーヴェルシノワーズ(モダンシノワーズ)戦争(これもかーなり熾烈な戦争である)」の戦況へ。現在までの調査だと「シェフズ」「礼華」「古月」の3店は傑出している。筆者の都内ナンバーワンは日本橋マンダリンオリエンタル48Fの「センス」だが、これで日本橋までわざわざ行かなくて良いのではないかと思う。特に「礼華(ライカ)」は極限的であり、全菜譜から8皿を選んで自由に組めるプリフィクスの1万円コースは極楽。誰でも知っているスタンダードな料理が、波動から輝度までめくるめく水準を見せており、責任を持ってお勧め出来る。筆者は単なる前菜のバンバンジーとエビチリの完成度と強度に完全ノックアウトされ、アルコール抜きでしばし桃源郷を彷徨った。写真は前菜の焼豚とバンバンジー(写真は余り旨そうに撮れなかった残念)。


 

 

SPもバーゲンに行くのですか?

Jun-30-2008

 

 

 

 



 「ダブ・オービッツ」のプロモーション期間に入り、連日ラジオだ雑誌だウエブサイトだと取材を受けまくっております(毎度同じ事を書きますが、こうなって来ると、ワタシ自身情報を把握しきれておりませんで、「マネージャーの速報」をご参照下さい。何度もページをめくらなくてはならないほど、この夏の情報が書いてあります)。明日はV6の岡田准一さんのラジオ番組に出演するのですが、この番組は岡田さんがゲストにいろいろ質問をする。という事らしいので、これは相手にばかり質問させては行けない、そんなキャバクラ嬢の様な偉そうな事が出来るもんか、こちらからもご質問を投げかけ、キャッチボールによって番組を上手く転がして行かねばと、勝手に質問表を作ってみました

1) 映画版「SP」では、堤真一さんはやっぱり悪役なんでしょうか?それともあれはいつもの、主人公の特異体質による幻視なんでしょうか?

2) 岡田さんはご友人が織らず、「SP」原作者/脚本の金城さんと毎晩ご一緒に映画をご覧に成っていると伺いましたが「パビリオン山椒魚」という映画はご覧に成りましたか?

3) 音楽の菅野さんのOSTは素晴らしいと思うのですが、毎回選曲される、クライマックスで流れるクラシックはどうおもいますか?特に、ショスタコーヴィチの交響曲5番「革命」

 4)素晴らしい飛びつき三角締めを披露されていましたが、どこの道場で、どなたに習った物でしょうか?

 よしこれだけ聞き出せば番組は成功したも同様。またひとつ良い仕事をしてしまったなあ。ワタシのラジオやテレビは、どういう訳か長続きしたことがないけれども、必ず水準以上に面白いと言う特徴があるのでR。などと大満足でうひうひしながら台本をめくっていたら、ワタシが質問するコーナーがひとつもなく(ワタシは岡田さんにマイルスの話を講義する先生役なのでした)、これはヤバい。しかし大丈夫。岡田さんからの質問の返しに、巧みに織り込もうと思います。

 「マイルスって、何で今でも研究する人が絶えないんですか?」
 「いや。研究者が絶えないジャズメンはたくさんいますよ。チャーリー・バードという人は、チャーチー・パーカーと間違えられる事をどのぐらい気にして生きていたか?というような。あと、映画版では堤真一さんはやっぱりそのう・・・悪役なんでしょうか?」

 というような形で。

 さて、当欄愛読者の方ならばご存知、新宿で一斉にバーゲンが始まりますので、実際のところ、もう仕事どころではないのです。カードは使わぬ完全現金主義なので、既に鞄の中に詰め込まれた×00万の札束は、いつでも鞄から飛び出せるのを待っており、特に今年はレディスのスイムウエアのインポートが例年になく充実しているので、50着ぐらい購入し「渋谷DUOのスタンディングの日」に、入り口でスタイル自慢の方々にお配りしようかと思う程ですが、これはちょっと様子を見ることにしましょう。これは冗談ではなく、数時間踊って、着替えてしまうのであれば、スイムウエアは充分ダンスウエアを兼ねると思いますし、セクシーさの追求がカリカチュアにまで至った一部の服から見れば、ソリッドでクールであると思うのですが、それはさておき、ファンメールなどによる報告をもとにすれば、現状ではアディダスのコラボもの(ステラマッカートニーなど)やスポーツマックスなど、スポーツラインに大きめのビジューで来るハイモードクラバー派と、夏物のドレスアップ(ローヒール)で踊ってしまう。という30年代フロア・リヴァイバル派に別れそうな気配が漂っており、どちらも高いクリエイティヴィティと可能性を感じさせます。そうそう。歌舞伎町クラブハイツでは、眼福を堪能させて頂き、有り難うございました。ジャズメン冥利に尽きます。

 と、どうしても女性との共闘関係ばかりが定着していますが、男性諸氏も頑張って下さい。因に初日である7/17はブルーザー・ブロディ没後20周年の記念日なので、我々のエレガントなサウンドの暴力を天国のブロディに捧げようと思います(因に初日は既に残席僅少、二日目はまだ少々余裕があります)。

 「男騒ぎのホストクラブもとても素敵ですが、わたくしの女の体がどうしても甘さを欲しがって止みません。夜会に伺わせて頂きます」というお便りも増え始めております。先日お伝えした様に、どうやら日比谷野外音楽堂は、ペペトルメントアスカラールと東京スカパラダイスオーケストラがエールの交換を行える程度には、客席がハーフ&ハーフに成る模様です。ワタシは色男集団であり、国内でも屈指の接客のクオリティを誇る、彼等に強い敬意を持っております故、ドレスアッパーの皆様に於かれましては、どうかワタシと共闘するかたちで、スカパラさんと彼等のファンの皆様方をおもてなしさしあげようではありませんか。その名もずばり「真夏の夜のジャズ」という映画がU-TUBEに分割アップされておりますのでご参照下さい。この映画には、ジャズと服飾への愛がまだマリアージュしていた頃の、悲しいまでの幸福の絶頂を記録しています。因に第二期ペペトルメントアスカラールは、ヴィオラとハープ以外、全員男性です。

 「ライブM/D 2」の開催が早くも決定しました。濱瀬元彦先生と我々による「音楽理論史とマイルス」というテーマのパネルディスカッション(一部実演あり)と、前回予定していたテーマに至る前にタイムアップとなり涙をのんだ高村是州先生が再登場し、「音楽と服飾の関係史」について議論しながら、マイルスやワタシ、ファレル・ウィリアムスの活動の意味について考察して行きます。詳細はのちほど。それではごきげんよう。


<キャプション>


 銀座午前3時

 新宿午前1時

 筆者が友人の任天堂Wiiで製作した、プレゴプレゴのカメリエーレ、富博くん