<BOSS THE NK(最終スパンクハッピー)の回想録(13)>

 

 「とにかく、小田さんに迷惑かけたくないんですけど、似てるんだからしょうがないよねえ(笑)」「あのう、何度も何度もすみません。この子がしてるんじゃなくて、あたしがしている、という事になるんですか?」「そこがご相談で(笑)」

 

 

 ご相談と言っても、菊地くんは小田さんに話を飲んでもらうしかない。「ODがもし、小田さんじゃなくて千住くんに似てたら、千住くんが女装してる事になってややこしいだろ(笑)。新顔でも良かったけど、却って面白れえよ」と言って、菊地くんはこの、大変なアクロバットがカスタマーにどう見えるか、それ以前に、そもそも賭場が立つのかどうか、二重の大博打の前にハイになっていた。私はODに毛布をかけてから、少し離れたソファに座り、二人の会話の録音を始めた。

 

 

 

 「とにかく、一切のご迷惑はかけません。あんまり好き言葉じゃないですけど、よく言いますよね、見え方、とか、見せ方、とかさ(笑)。小田さんにもパブリックイメージあるもんね」「いや、まあ、そんな大仰なものでは、、、」「でも、この子、身長もハイヒール履いたら僕を越すし」「そこ、嫌なところじゃないんですか?(笑)」「全然(笑)、それはともかく、身長もあるし細いし、手足長いから、分かりやすくハイモードにしちゃうんで、比較的大胆なルックになるときもありますけど」「胸出すとか?」「いやいや胸は出さない(笑)。テレビ出れないでしょ(笑)」「それ言ったら刺青もダメなんじゃないですか?地上波なら」「あそうだ!(笑)手袋しますよ左手だけ(笑)」「取り敢えずそこはオーケーです(笑)」「了解です(笑)。デビューが夏場で、夏フェス決めたいんで、そうですね、スイムウエアに長襦袢にハイヒールでフジロックに出ます。ファレルのハッピーの、後ろにいるモデルみたいな(笑)」「ううううう(笑)。あの、そのスタイリング自体は素敵だと思うんですけど、、、、、しつこい様ですけど、永遠に、あたしなんですよね?行く行くは種明かし、みたいな事はなく」「どちらが良いですか?」「いや、あの、全然。ある時、二人出てきたら凄くないですか?モノマネの、ご本人登場みたいな。この場合、どっちが本人なんだか分かりませんけど」「すげえ事言うなあ(笑)」「とにかく、あたしは何も考えないで、普通に自分の活動してて良いんですよね?」「はい」「分かりました。だったら菊地さんにお任せします」「うわー簡単に決まった(笑)緊張して損しちゃったな(笑)」

 

 

 

 「菊地さん、ただ、一つだけお願いが」「ありゃあ、気が合いますね(笑)。こっちも一つあるんですよ(笑)」「(笑)契約書とか書きます?」「いやいやいや。乃木坂ぐらい売れたらにしましょう、書き物はおっかねえから(笑)。つまり一生書かないけど(笑)。あ、すみませんお願いというのは?」「楽曲は、お二人で書くんですよね?」「それは書く(笑)。こいつ、なんでもできるんで」「そしたら、全曲チェックさせてください」「喜んで(笑)。ダメなところがあったら書き直してください(笑)」「喜んで(笑)」「有難うございます(笑)」

 

 

 

 「で、あたしにお願いっていうのは、、、、」「あのう、、、ですね、、、、」「はい、、、」「あいつをここに住ませてやって欲しいんです」「ええええええ!!?」「週に1回は川崎のパン工場に帰しますんで、、、、できたらそのう、、、、週5で(笑)」「ちょっと、、、、うううううそれは。長考に入っていいですか?(笑)」「勿論です。では、仮契約成立という事で(笑)」「菊地さんほんと楽しそうですね(笑)」「だってヤバくないですか?(笑)4人で2役、、、、あれ違うか?」「そうですよ!さっきのお話だったら。だって私でしょう?菊地さんでしょう?ボスさんでしょう?彼女でしょう?それで、外向けには、菊地さんとあたしがやってるのに、、、、」「別人だって言い張ってる、という態だから、、、」「だから、都合4役ですよ。4人4役っていうか、、、、あれ、違うか?」「そうだそうだ!変形した4人4役ですよね!中身が違うだけで!うはははははははヤベー(笑)」「入れ替わりやりたいですね(笑)入れ替わっても分からない(笑)」「小田さん面白いなあ(笑)」「結局全員、誰だかわかんなくなっちゃったりして(笑)良いなあそういうの」「良くないでしょう(笑)」

 

 

 

 私は立ち上がり、ODを起こそうとした。すると小田さんが、「あ、ボスさん」と私を制した。

 

 

 

「大丈夫です。今日から半同棲しますね(笑)。ODと(笑)」

 

 

 

 マネージに関する話を済ませ、川崎の工場から届けられた、5日分のパンを小田さんに託して、私と菊地くんはODを残し、小田さんの部屋から出た。菊地くんは競歩のような速度で歩きながら「よっしゃあ始まった。ヤベえの始まった(笑)」と言って、特殊メイクのように目を血走らせていた。

 

 

 

 「大丈夫か?小田さんとの会話は、一応録音しておいたが」「嫌だねえ請負屋は(笑)」「ODと一緒に長期間過ごしたのは、今のところ、工場の人達だけ、と考えるのが妥当だろ?」「え何?あいつ夜中に遠吠えしたりするの?(笑)」「可能性はゼロじゃない(笑)」「そうだな、もしトラブルがあったら、君が預かってくれ」「マジで?」「マジで、とか言うんだな(笑)」「たまにね(笑)。まあわかった。その場合は湾岸の倉庫に二人で移る」「あの、ディーバに出てきた隠れ家みたいなとこな。ローラースケート買わねえとな」「それにしてもちょっとハイ過ぎないか?」「そっりゃそうだよ。これ、さっき長沼から」

 

 

 

 菊地くんは印籠のように、歩きながらガラケーをかざした。そこには、彼のマネージャーからのメールで

 

 

 

 <伊勢丹からキャンペーンソングの依頼が来ています。今年の5月との事ですが、間に合いますでしょうか?>

 

 

 とあった。

 

 

 

「これじゃあ仕方ないな(笑)」「だろ?(笑)どんな賭場でも、立ててねえ限りツキ自体が来ねえ。あいつ持ってるよ。今、パン食ってるか寝てるか?いくら賭ける?」「パンに5万」「寝たままパン食ってるに10万だ(笑)」。彼は歩きながら電話をかけ、あもしもし~。どうも菊地です~。先ほどはどうも。あいつ今何してます?と聞いた。