<BOSS THE NK(最終スパンクハッピー)の回想録(2)>

 

 読者の皆さん。私は現在、BOSS THE NKと名乗っている。菊地成孔くんとは友人関係にある。と言っても通用しなかろう。すぐには。

 

 

 

 早速昨日の話の続きに入る。我々は震災による人々の多重的な被災に対するサポートを続けてきた。菊地くんはラジオを。即ち、音楽と言葉を使って。私は私なりの仕事をしてきたのだが、内容は明かせない。それは主に始末に関するジョブであって、菊地くんとはだいぶ職種が違う。書けるのはそれだけだ。

 

 

 

 7年以上かけて、私は始末を続けてきた。あらゆる仕事を請け負うのが請負人としてのプライドであることは言うまでもない。それでも、気が重い時は気が重くなる。

 

 

 

 ある時、数年ぶりで菊地くんから連絡があった。彼はガラケーだし、私も仕事の請けあいにはスマホは使わない。あんなに足がつきやすい道具を使って、人々は危険が全く伴わない、安全な行為だけで日々を過ごしているのだろうか。

 

 

 

 いずれにせよ、菊地くんは「スパンクハッピーをもう一度立ち上げることになった」と言った。彼は、07年に活動を休止したDCPRGを10年に再活動させた。それに際しては私には何の依頼もなかった。ただ、彼があの電化オーケストラを大きく動かす時、必ず乱世が訪れる。翌年に何があったのかは言うまでもないだろう。

 

 

 

 国内戦であるアルターウォーから7年が経過したある日の、その電話はかかってきた。「○○(私のコードネーム)、大仕事だ。スパンクハッピーを再始動させる事になった」「今回は何をすれば良い?」「全てだ」「全て」「ちょっと待ってくれ。なんで今更あのユニットを再始動することになったんだ?それを聞かないと、請け負うことはできないな」「ラジオで、再始動を宣言してしまったんだ」「それは、したくもないのに、口が滑ったという意味か?」「違う。まあ、オレの心理的な流れは興味がないだろうから、事実だけを話すよ。番組で、過去の遺物として第2期のスパンクスの音源を流すと、リスナーの食いつきが異常に良いんだ」「<15年早かった>バンドの、マーケットの無理解を、11年ぶりで晴らそうということか?(笑)」「違う。マーケットの無理解を晴らそうなんてオレが考えると思うか?(笑)」「一生、晴らしながら生きることになるな(笑)」「そうだ(笑)」「直観か?いつものように」「そうだ。やるべき時が来た。この国はインターネットとSNSの完全な普及によって、鬱病患者数をやみくもに増大させ、国民に愚痴を垂れ流させて満足させることで、国民の健全な行動力を押さえ込んでいる。彼らは、愚痴り、毒を吐き続けることで、自分を動けなくしている」「その考えは一部硬直していると思うが、続けてくれ」「そうした世の中で、2期スパンクハッピーが、特に若年層からの食いつきが良い」「病みだとか、みんな死ねだとか、単なる退行を、社会側に責任がある他罰的な鬱病自覚につなげるしかないからな。国民は」「そうだ。そんな中、2期のスパンクハッピーが、病みのオールドスクーラー、メンヘラの旧約聖書のように扱われるのは、忸怩たる思いがあるね」「判からいでもないな。汚名を晴らしたい。という訳か」「いや、音楽がどう解釈されようと構わない。マーケットは、あらゆる皿から、好きなものだけしか食わない。ブッフェと同じだ。とあるブッフェから、オマールのグラタンばっかりが回転しても、ホテル側は汚名とは思わないだろ」「喜ぶだろうね(笑)」

 

 

 

「ただ、2期がアティテュードとしたのは、青春の全否定だ」「左翼性だな」「そうだ」「発売当時は、青春こそが国民食だった。大人が後めたいまま青春を、思春期にある者が大手を振って青春を、子供が背伸びして青春を。青春は全世代必須のコンテンツになった」「青春を売るのは、米やデニムを売るのと変わらなかった。という訳だ」「そうだ。そんな季節に、米もデニムも売らなかった2期がセールする訳がない。オレは、米とデニム以外の食材を磨き抜いて、どれだけ人々がくうか試してみた」「予想より喰われたろ?(笑)「ああ(笑)。それで満足だった。だが」「今は忸怩たる思いに熟成された。そうだな?」「というか、まあ」「番組をやっていて、健全な左翼性に火がついたか?(笑)」「まあね(笑)。あくまでポリティカルな側面では」「退行と幼児性の全否定をするのか?それとも、今こそ2期のイデオロギーを打ち出すのか」「あえて言えば前者だが、音楽はもっとでかい」「でかい。そうだな」「構造と力、の時のことは恩に着てるよ」「まあ、終わったことだ。それより、今回はどうする?」「活動の再開はオレが発表する。君はオレの変装者を擬態して、バディを探し、まずはデビューしてくれ。そこまでで受任報酬を支払う」

 

 

 

 「了解。バディの条件は?」「完全な素人で、天才であること。ルックも歌唱力も潜在していて、特にルックは、一から作り上げられること。年齢は10代から30代まで。そして」「そして?」「できれば、作詞作曲と編曲と演奏が全部できることが望ましい。スキルだ。もうマネキンはいらない。というより、マネキンでは元の木阿弥だ。君には、大きな年齢差を超えたバディを組んでほしい。バディフッドを見せたい。あとはインスタグラムとツイッターの運営」「活動期間中、君はどうしてる?」「他のミッションにあたる」「何年やる?期間は」「双方の存命中」「成功報酬がいつもの額では済まないのはわかってるな?」「わかってる」「ちなみに、だが、SONYからのレーベル閉鎖勧告の件は聞いているが、問題ないな?」「致命的ではない。としか言えないね」「君が嫌いなSNSに手を出す理由は?私が君の擬態である事のほのめかしか?」「一つは、君が探し出す相棒には、様々な服を着てもらう事になる。現状での最大の宣伝媒体がラジオだからな。服が見せられない。あと一つは」「うん。あと一つは」「番組が終了する気がする」「ほう」

 

 

 

「ところで、オレの今回のコードネームはどうする?」と私が問うと、彼は「後日決定してから伝える。じゃあな」といった。

 

 

 

 それから数時間で彼からメールが来た。そこには

 

 

 

BOSS THE NK (「BOSS THE MCじゃないよ。というエクスキューズ付き)」

 

 

 

 と書いてあった。まあ、ブルーハーブのマニアからは苦情が来ないだろう。「ナル・ボスティーノ」だったらギリだが。と私は、今後おそらく死ぬまで表向きで名乗るであろう数秒間だけ吟味した。

 

 

 

 

<追記>

 

 

 

 連載二回目にして追記がある。菊地くんが事を起こすと、大抵何かを引き込む。 

 

 

 

 以下は2期スパンクハッピーの楽曲の歌詞である。私はこの曲こそが2期スパンクハッピーの代表曲だと思っている。活動再開に際し、この楽曲の凄まじいリリックが、本件を引き込んだと言えるだろう。白眉は、当時40代だった自分を、社交界の少年男娼として楽曲内に登場させたことだ。

 

 

 

 少年男娼が登場する歌曲は、J-POPは言うまでもなく、シャンソンですら存在しない。この曲の再演を期待するファンは、最終スパンクスに関しては、とするが、存在しないだろう。完璧な過去の遺物だ。私は彼がこの詞を書いているところを見ている。大袈裟でなく彼は、10数分で一気に書き上げ、一文字も直さずにスタジオに入った。浅草のダンキンドーナッツでの事だ。

 

 

 

 

 あなたの国は、小さい子のヌード写真がおおすぎるって、どのパーティーでもいわれた。街中に裸の女の子の写真があふれていて、電車の中にまでつってあるのは絶対おかしいって。

 

 

 

でも、まさかそのうちの一人があたしだってことは、誰も気づかなかった。

 

 

 

あたしはこういう所に集まるマダム達は、エメラルドを頭にいっぱいつけすぎて馬鹿になっちゃったんだって思って育ったの。 

 

 

 

パパは「この国には肉食の文化が無いから。みんな我々のように乳のみ仔牛から腐りかけの成牛までの、いろんな肉の味わいの差だとか、ジビエの血の味の事とかが解らない。だから子供の裸ばかりを有り難がるんだ。一種の国家的変態だよ」っていうお得意の演説で、腐りかけの成牛みたいなママを喜ばせてる。彼女はキャビアを食べている人を見ると鼻をつまむ。

 

 

 

小さな卵を食べるのは野蛮人だって。 

 

 

 

フォクシー1粒でアダルトヴィデオの女の子みたいになれるってきいたから、あたしは自分を魔女だっていってる友達に頼んで、パーティーに持ってきて貰い、最高に良く効きますように。そしてあこがれのトレーシーみたいになれますようにって魔法をかけてもらってから、彼女とキスをして、コアントローで飲みほした。どこかで生きていれば35になるのね。あたしのトレーシー・ローズ。あなたは、あたしが知るかぎり本当の天才。そして天使。 

 

 

 

あなたとパパの書斎で出会った日のことは一生忘れないわ。

 

 

 

黒革の表紙の本の裏に隠されていた80年代のVHS(ヴェ・アッシュ・エス)。あのヴィデオキャセをパパから盗んでから、あたしの人生は変わった。あれがバイブルになったの。あたしは今、あなたがデビューした年と同い年で、あなたの娘ぐらいの年だわ。そう思うと、とっても変な気分。まだフォクシーは全然効いて無いみたい。口の中は、熱いチェリーの味ばっかり。 

 

 

 

生きてれば74歳になるのね。あたしのグレース・ケリー。

 

 

 

生きてれば15歳に成るのね。あたしのジョンベネ・ラムジー。

 

 

 

あなた方の事を考えると、死ぬほどうっとりして、死ぬほど憂鬱になるの。

 

 

 

パパの命令でお医者様にマリリン・モンローそっくりに改造されたり、本当にある国の王女になるなんて絶対に間違ってる。でも死ぬほど羨ましい。そして死ぬほど怖い。あたしはこんなに死ぬほど羨ましくて、死ぬほど怖くて、死ぬほど退屈。

 

 

 

 

ヴァンドーム・ラ・シック・カイセキ

 

 

 

ヴァンドーム・ラ・シック・カイセキ

 

 

 

ヴァンドーム・ラ・シック・カイセキ

 

 

 

ヴァンドーム・ラ・シック・カイセキ

 

 

 

 

たくさん血が出たり骨を折っちゃったりするのは僕の時代にはあんまり好まれなかったんです。フェティッシュとか、精神分析とか、そういう詰まらないものが流行っていて。でも、彼女達が好きなものが結局、宝石と香水と毛皮だって事は永遠なんですよ。裸に毛皮だけ着せて、香水の瓶を割って、お腹を軽く傷つける。詰まらないプレイですけど、効果は凄いんです。真っ赤な血がうっとりするような香りで。 

 

 

 

宝石も勿論たくさん使いました。トパーズ、アメジスト、オパール、こういう物には、水晶以上の魔力と、生体科学的な影響力があって、まあ、若返るんだと(苦笑)。こういう話をすると、馬鹿にして嘲けり笑っている連中ほど、瞳孔が開いているのが解る。後で必ず呼び止められるから絶対。それで、彼女達の宝石箱から一つ残らず出させてね。身につけさせるんじゃないですよ。体の中に入れてゆくんです。

 

 

 

滑稽といえば滑稽だし、でも芸術的とも言える。お腹を宝石でパンパンにしたご婦人が喘いでるんですから。

 

 

 

勿論、楽しくも何ともなかった。気持ちよくも何ともなかった。嬉しくも何ともなかった。この国の社交界の一部では、こういったことが何百年も続いてるんだなって思うと、変に敬虔な気持ちにさえなりかけたもんです。日本人だからでしょうね。僕は20歳過ぎてたんだけど、誰もが15歳ぐらいだと思っていて。 

 

 

 

最近はちゃんとクラブがあったりするんですよ。卓もサウンドシステムもすごく充実していて。ヴァルスやポルカが終わると、変な、聴いたこともないオーストリア語のハウスみたいのがかかるんですけど、みんなハイヒールに革靴だし、っていうか、踊りが凄くて、笑うのを我慢するのに苦労しました。嫌な感じの嘲笑しかできないから。生まれてからずっとそうなんです。

 

 

 

復讐心ですか?どうだろう?今の東京の子供に比べればね。 

 

 

 

アメリカのポルノ女優に憧れてる。っていう日本人の女の子が居て、さっきフォクシー飲んだの。って、この子は全然踊って無くて、目をトロンとさせて、年寄りばっかり狙ってた。

 

 

世界中に行ったけど、どこも何も変わらない。俺みたいになるなよ。って誰かに思ってた頃もあったんですけど、今はそんな誰かも居ない。生まれて初めてです。自分からキスしたいなって思って。でも諦めました。彼女は、消えてた。 

 

 

 

 

ヴァンドーム・ラ・シック・カイセキ

 

 

 

ヴァンドーム・ラ・シック・カイセキ

 

 

 

ヴァンドーム・ラ・シック・カイセキ

 

 

 

ヴァンドーム・ラ・シック・カイセキ