まだジャミング

Nov-01-2007

 

おおっぴらに「野宮真貴さんのリサイタルの準備をしている」と書ける様になって随分とスッキリしました。このプロジェクトは周到で、第一回を終えてすぐに計画され、ワタシにオファーが来たのは初夏でして、それから野宮さん、林さん、湯山さんという主演/演出/制作者と打ち合わせ(という名の、テーブル一杯に趣味の良いお茶とお茶菓子が並んだ、いろんなCDを聴いたりダベったりする物凄く贅沢なお茶会)を繰り返して来た訳ですが、この、ある意味世界で最も贅沢な「女子校の文化祭」としてのチーム(さっきからお茶会だの文化祭だの書いておりますが、これは言うまでもなく、誹謗やからかいではありませんぞ。敬意そして、これは何と言うか、一抹の憧れの様な。背が高くて美しい、口数少ない女優、陽気で姉御肌で恰幅が良いボス、インテリで才気煥発で背が低い演出。と、まるで映画です)は、その才能やエネルギーは言うまでもなく、悪人や病人が一人もいない所も本当に素晴らしい。「女三人のチーム」と言えば、最近ではタランティーノの「デス・プルーフ」ですが、今回のワタシはチャーリーズ・エンジェルのボズレーみたいな物でしょう。「ボズレー症候群」という物があったらワタシは間違いなく症状持ちです(チャーリーは嫌なんですね。ここらへん、フロイト的に読みやすい所ですが)。ワタシが「ドリームガールズ」を余り好きに成れなかったのは、ボズレーもチャーリーも存在しない物語だったからかも知れません。

 公演が来年4月ですからまだ何も書けませんが、現在、公演のメインになる書き下ろしの曲を録音しています。シンメトリーを形成する2曲のカップリングなのですが、作詞/作曲するのは実に久しぶりです。思えば「cure jazz」以来ですね。等と流暢な事を書いていますが、明日がレコーディングでありまして、今夜は徹夜かも知れませんので(歌詞と別に長い台詞を書くのですが、それがまだ出来ていないのです)、さきほどまで「プレゴ・プレゴ」に行って参りまして、カポナータ、ちりめんキャベツとボッタルッガのスパゲッティ(ビアンコ)と、ホロホロ鶏をモモはコンフィに、胸はローストし、ジャガイモを添えた皿を頂き、グラスの赤を二杯、締めにフロマッジョのミストを頼んだ所、こちらもジビエの季節、ハトのラグーにパタータのマッシュを乗せたグラタンの小皿をサーヴィスして頂き、意地汚くも総てペロリと食べてしまいました。店長も料理長も絶好調。「プレゴ・プレゴ」は加速度的に料理のクオリティを上げています。

 明日が終われば明後日はニューアルバムのダビング&編集。ニューアルバムもほぼ同時進行で制作快調という所です。今回は敢えてリリースまで前情報を総て抑え(とはいえ、そんなびっくりするほど斬新なモノをやるのではないのですが)、発売&初ライブを堪能して頂こうと思っています。本日は芸大の授業→芸大の学食で「kamipro」のインタビュー→美学校のフロアでTBSラジオの打ち合わせ(レギュラーでは有りません念のため)→美学校の授業→「プレゴプレゴ」で夕食、そしてこれから作詞に取りかかります。恐らくあと10日程でジャミングも終わるでしょう。秋山の復帰戦、亀田問題、「大日本人」評などについてはまた折りを見て。「ニューメロ」最新号やオーチャードのフライヤー等々、最新のアー写がちらほらと出始めています。今回は使用テイクが多いので(10個ぐらいある)、いろいろな媒体にまき散らそうと思っています。それではごきげんよう。




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 1)パリでも最古参の一つである老舗ブラッスリー、中高年ギャルソンフェチの聖地「シャルティエ」店内。ギャルソン氏は全員年配、しかも動きのキレが最高。料理は物凄く旨いとは言えないが、銀座の煉瓦亭や、新宿のらんぶるの様なものと言えるだろう。とにかく詣でる様に行くべき店。回転ドアや中二階、キッチンの鉄火場ぶり、ギャルソンの「愛想いい派/悪い派」に、余りにもはっきりと二分されるフランス気質など、見所満載。

 筆者は取材の合間、数時間の休憩が出来たのを見計らって、2年ぶりに詣で、ぎゅーぎゅーの相席に押し込まれる。右隣はサッカーの応援に来た体重120キロのイギリス人二人組、左隣はメトロのキップを巻き紙に煙草を吸い続けるほほに傷のあるフランス人、向かいは一人旅のドイツ人の中年女性で、フランス人が英語でナンパを始めたが、ドイツ人女性は何か物凄いトラウマが有りそうで、蚊の鳴くような声で答えている。そのうちカルテにあるエスカルゴを指差し「これは何?」というので、フランス人はターブルのクロス(紙)に絵を描いたり必死の説明を試みるが通じず、いきなり筆者に「おい日本人、英語でエスカルゴは何だっけ?」と助けを求めるが解らず。筆者が身振り手振り付きで「葉っぱの上をゆっくりゆっくり動く、ゼリーの様な虫の事ですよ。陸の巻貝です」とドイツ人女性に言うも、彼女は弱々しい微笑を浮かべるばかり。すると突然、隣のイギリス人が「ああ、エスカルゴを英語でか?スネイルだよ」と答える。フランス人、筆者、イギリス人で、声を揃える様に「スネイル」と言うが、彼女はお手上げのポーズ。

 2)そこに、筆者がオーダーしたエスカルゴが届いた。筆者はその皿を彼女の目の前に出し「フラウ・ダス・イスト・エスカルゴ」と言うと、イギリス人とフランス人はガッツポーズ、思わず三人で握手をするが、彼女はこわごわと皿を覗いて気持ち悪そうにするばかり。彼女はビーガンらしく、野菜だけを注文し、全く音を立てずに食べ、我々三人に「サンキュー」と言って去った。


 3)取材疲れの記録。

 

 

 

そろそろジャミング終了(パリ特集も)

Nov-04-2007

 

 

 

寒いですなあ。ワタクシ寒いとゾクゾクします。等と書くと「そのまんまやん」と、ワタクシが蛇蝎の如く嫌うニセ関西弁(非関西人が、日常語にちょっと関西弁を入れること。どうしてあんなに鳥肌が立つほど嫌悪感があるのか。ニセ薩摩弁ならなら平気ですたい)によって突っ込まれそうですが、そういう事ではない。いや、そういう事か。毎年、空気の匂いによって「あ、冬が始まった」と気がついた瞬間は、野犬やハイエナが乗り移り、目鼻が研ぎ澄まされる菊地成孔であります。今年の冬はどれだけ悲しい事が有るのか。どれだけ美味しい物を食べるのか。どれだけ暖をとり、どれだけ寒さに震えるのか。考えただけでも興奮して涎が垂れてしまいそうである。

 とはいえ本日はダイエットの話であります。昨日&本日はアルバムのダビングと編集の一日でしたが、アルバムのジャケット撮影が4日後に迫ったのでワインを断ち、夕食をソイジョイとトマトジュースだけにしております。いきなりそうするわけでない。「スペインの宇宙食」をご参照頂きたい所ですが、ワタシは18歳(81年)にして初めてダイエット/フィット概念に触れ「世の中にこんなに面白い考え方が有るのか」と大いに感服し、以後、体重を中~短期スパンで大幅に増減しながら生きておりまして、今やダイエット(単なる痩身ではなく、筋肉と体脂肪のコントロール)は趣味そして職業の一部となっております。

 今回は一ヶ月メニューになっておりまして、まずは糖質と脂質をゆっくりと減らして行く。という、比較的在り来たりな方法を採っています。ドルチェは帰国後すぐカットし、麺パン米は2週間前から徐々に減らし、ワインは一昨日から一気に断つ。と、筒井先生の「夢の木坂分岐点」の如しですが。

 運動は帰国後から日課のストレッチと無酸素運動のメニューを10日ずつ倍々式に3倍まで上げ(途中、風邪を引いて倒れた日の中断を除く)、有酸素運動は今回はサックスを吹く事に全部預けました(アルバムで全曲サックスを吹きまくるので、今月は日常的に大いにサックスを吹いていたのです)。

 パリコレなどに行っておきながら、否、行っているからこそとも言えますが、ワタシは痩せている→美しい、太っている→醜いというコモンセンスほどみみっちく悲しい物はないと思っております(もっとも、病的な物は痩肥どちらも、文字通り「病的」には見えますが)。美醜がそんなに簡単な物だったら、賢愚も善悪も同じほど簡単であろう。深田恭子さんと宮沢りえさんとリア・ディゾンさんの体脂肪率の微妙な変化に対し、我々の審美眼は侘び寂び即ちマイクロ単位のチェッカーを常に駆動させているのではないか。今回のワタシのダイエットの第一の目的は、次のCDジャケット用のスーツがテーラードで、採寸したのがパリ前だったという痛恨の事実(涙)にアジャストしなけれなばらぬという事であり、第二にはちょっと楽しいから。という訳であります(ご存知の通り、太って行くのも「ちょっと楽しい」ですからな)。

 よく「そのお年で、美食家で、タクシー移動なのに細いですなあ。(或は「肌がお奇麗ですなあ」などとも。因に「毛がフサフサしていますなあ」と言われた事は一度も有りません!カツラをつけていても!!)恨まれますぞ」等と言われるのですが、捨てた女ならともかく、見ず知らずの人々に恨まれてはたまらない。と、これでは若干カマトトでありますが、とはいえなんの魔術も無し。風呂上がりに全身をストレッチ30分、無酸素運動60分。Uチューブを半分我慢すれば楽勝で捻出出来る時間でしょう。ところがマイルス本執筆期、ならびにパリコレ取材は共に激務であり無念、日課の運動が全く出来なかった。しかもパリでは朝はキャフェ昼はビストロ夜はブラッスリーと、月収10倍、支出は10分の1、体脂肪成金となって帰国しまして(「Hanako」は帰国直後の撮影なのでふっくらしております。これはこれで恰幅が良く、また中年的にダラしない感じで嫌いではないけれども)、これでは撮影用につくったスーツのボタンがはじけ飛んでしまう。採寸から完成まではこれ1ヶ月を要します。

 と言う訳で、「クールストラッティン」の諸君に、現場で思いっきりスーツの前ボタンを引っ張らせたり、ジャケット写真の顔が真っ赤っかになったりしないで済むよう(文字通り、あんなクールな諸君にそんな不細工なマネをさせたら面目が立たん)、ドルチェやパスタを控えていたのですが(ジビエはタンパク質の塊ですので大丈夫なのです。とはいえ現在、ソイジョイを齧っています。これは旨い)、どうやらこれで、リラックスした顔でジャケットが撮影出来そうです。「やったあ!好きなスカートがはけたあ!」等といってニッコリしている女性などをテレビで見るにつけ「何をみみっちい。ワンサイズ上を買えばよろしい。アメリカの友人に頼めば、はけたあ!どころか、中でぐっすり眠れるサイズのが届きますぞ」と言って憐れんでおりましたが、無知蒙昧とはこの事、初めて撮影用にテーラードのスーツをしつらえたりした御陰で、彼女達の気持ちが手に取る様にわかったのでありました。それではごきげんよう。



<追伸>

「歌舞伎町のミッドナイト・フットボール」が御陰さまをもちまして重版しました(三刷)。有り難うございます。最近「何から読めばいいですか?」というご質問をたくさん頂戴するのですが、答えられませんので(笑)、近いうちに、「CD et DVD」及び「ouvrage」欄を更新し、CDと著作の全解説をアップしようと思っております。




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 シャルル・ド・ゴール空港は筆者とテュエリー・ミュグレーの「エンジェル」が出会った記念すべき地である。8年程前、大友良英ニュージャズクインテットの欧州ツアーの最終日がパリだった事があり、しかも筆者は帰国後、成田空港から直でJ-WAVE入りし「スネイル・ランプのオーマイレディオ」にゲスト出演するという強硬スケジュールだった。番組ではゲストの「お土産」がコーナー化していて、筆者も何か持って行かなくては成らない。帰国便が天候の都合で数時間遅れ、ド・ゴール空港で土産は探し放題と成った。

 ギリギリに着想を得る事が得意な(そればっかりな)筆者は、このとき突如として「カッコいい男の子がレディスのパルファムをつける。というのはセンスがいいのではないか」という天啓を受け、レディスの香水売り場へ直行、片っ端からテスターで香りを試していたのだが、どれもピンと来なかった。しかし「エンジェル」と出会った瞬間、ツアーの疲れが一瞬にして解けて行く様な癒しと官能に撃たれ、即購入。しかしこの「お土産」は彼等には不評で(というか、香水自体に抵抗があったと思われる)、番組では「ギャグ土産」のようになってしまった。収録語「要る?これ?(笑)」と聞くと「いいです(笑)」という答え。筆者はそのまま持ち帰り、私物と成った。もし彼等が非常にこれを気に入っていたら、筆者は今頃カルバンクラインの柑橘系のままだったと思われる。それにしてもKLM吸収後のエールフランスは機内食が急激に不味く成った。オランダ人は美味しい物が嫌いだと思われる。日本人乗客達は難民の様にカップヌードルの前に行列した。

 帰国便搭乗前。と言う訳で、当欄での「パリ写真特集」はこれにて最終回。「ファッションニュース」にご期待ください。

 

 

博打の才能/才能の博打

Nov-08-2007


 「茂木×斉藤賭博(過去ログ参照)」にて、またしても儲かりました。「11月までに5万円」という剛胆かつ愚かな友人がいたのであります(職業*評論家)。ざっと試算するに、つまり、時期はさておいて、とにかく「いつかは解答が有る」として張った人物の掛け金が全額入って来るとすると(ワタシは「永遠に解答は無い」に張っているので)50万近く成りますので、これは笑いと舌打ちが止まりません(舌打ちに関しては後述)。

 ワタシには生まれもっての奇妙なバクサイ(賭博の才能。の意)があり、これは<青春時代/菊地成孔新宿青雲編>といった、当欄に書くのは若干憚られる過去の厳然たる事実ですが、一時期は賭け麻雀で暮らしていた事が有ります(半年ほど)。とはいえ一番狭い意味での博打は麻雀しかしません。

 ワタシのバクサイは<人生に於いて「こっちに張る」と決めた方が当る>といった才能であって、「こっちの道に行く」と決めると、選ばなかった道でドカーン!キャー!という声がして、うっわー助かったーという痙攣的な安心感の連続で生きて来まして、これは過去、インタビューなどでも多く語っていますが、「あのとき、オーディオセットじゃなく、8ミリカメラを買っていたら、今頃監獄行きだったかも知れない」「あのとき、<ゲット・アップ・ウィズ・イット>じゃなくて<ホワイト・アルバム>を買っていたら、今頃監獄行きだったかも知れない」「あのときこの世に生まれて来なかったら、今頃監獄行きだったかも知れない」「僕の髪が/肩まで伸びて/君と同じに/なったら、今頃監獄行きだったかも知れない」「なつかしい/痛みだわ/ずっと前に/忘れていた/でも/あなたを見たとき、今頃監獄行きだったかも知れない」「我が輩は猫である、名前は監獄行きだったかも知れない」等と、やたらと監獄行きだったかも知れない訳ですが、とはいえ今回ワタシの目標は、この賭博を高額にして現場を押さえられ、つまりはワタシが逮捕される事なのです。

 そもそも、高額の賭博によって逮捕される知名人。というニュース自体が随分と久しぶりなのに持って来て、新聞や週刊誌に「脳ー!元・東大講師、<茂木×斉藤賭博>で逮捕」という見出しが出、「<茂木×斉藤賭博>とは?」という解説が出る訳で、あらゆる意味でこんな面白い事はありません。1960年代的とも言えるパフォーミング・アートにして凄く小粒のワイドショーネタにしてドリフターズや中日ドラゴンズに対するこれ以上にないほどの真摯なオマージュ。しかし不景気である。経済的にも洒落的にも。これでは小遣い銭にすらならないではないか。チッ。

 とまあ、秋の舌打ちは良い物です。本当は四季を問わず、舌打ちはとても良い物ですが、最近は奇麗な舌打ちも聞きませんな。嫌な事があると、反射的にめげてしまい、黙ってしまう。という習慣が付くと、舌打ちする筋力が退化します。舌打ちの良い所はリズムでありまして。「チッ。馬鹿めが」で、ワタシの基礎リズム感だと2拍なのですが、3拍の人もいて、、、、と、こういった話は余りにも面白く、長く成るので止めておきますが、まあ古くからのファンの方(最近は、「新しいファン」と「古くからのファン」の大雑把な区分け方として「新しいファンは<火曜の夜が寂しいです。早く番組を持ってください>」というメールを送ってくる。というのが固定的になっています。新しいので仕方が無いですが、若干方法を間違っておられます。こういう事はワタシに1000回言うよりも、J-WAVEに500回ぐらい言う方が遥かに効果があるのです。来年1月に成ってもJでワタシの番組が始まらなかったら抗議のメールをJに出してください。くれぐれもワタシに出さないように)なら既に「また始まったな」とお気づきの事でしょう。要するに疲れているわけですね若干(笑)。と言う訳で、今夜は締め切りを二つブッチ切って寝てしまい、明日に備えます。明日はBunkamuraでイベント、そして終了後インタビューが二つあるのですが、それはともかく、明日は「hanako」の発売日であります!何とイベント会場で売り、買って下さった方にはワタシがサインをするとのこと!びっくり仰天!雑誌にサインして良いのか!しかも公式に!ごきげんよう!

 

 

 

Hanako&新バンド

Nov-10-2007

 

 

 

「Hanako」が発売されました。写真撮影が帰国の翌日だったため、ワタシの顔がふっくらかつ、ボケーとしている(凄まじい時差ボケ&取材疲れだったので)点はご愛嬌としましても(笑)、我ながらなかなか良い仕事をしたなと思っております。当初は「新宿」という括りだけで、中華やエスニックも全部含んでいたのですが、伊仏だけに絞ろうという企画を出した段階で、飛躍的に良い記事になったと思います。

 ワタシはいろいろな仕事をしますが、他人様が作った物を他人様に推薦すると言うというのは、自分が作った物を人様に売るのとは全く違った責任感が生じるもの。とはいえ、ワタシは音楽と料理の見立てに関しては自信を持っておりますので、ラジオ番組やDJ、料理店の紹介などの仕事は、いつでも非常に楽しく、充実した物に成ります。

 1店を除けば何方でも気軽に行ける価格帯の店ばかりですので、誌上に掲げた「職場が新宿にあるOLさん」のみならず、遍く都内にお住まいの皆様、新宿にお越しの際は、是非お立ち寄り下さい。味はワタシが保証します。取材を許可してくれた総ての店の、総ての経営者、料理人、給仕の皆さん、起用して下さった「Hanako」編集部に敬意と感謝を捧げさせて頂きます。

 さてジャミングも終わりと書きましたが、渋滞的なヤバさは抜け、流れは良く成った物の、仕事の量が減った訳ではなく、「大量の仕事がどんどんこなされて行く」という状態に入りました。明日より3日間、パードン木村さん宅にてニューアルバムの総仕上げに入ります。

 と、ここで、ニューアルバム/ニューバンドに関する情報が解禁と成りましたので、、、、と、「解禁」などと書くに、あたかも情報をコントロールしているみたいで実にカーッコ良い訳ですが、実際はぜんぜんカーッコ良くなく、我々のA&R=制作責任者である高見君が、アルバムの出来の良さに嬉しく成って、ついついミクシィでフライングしてしまい(笑)情報解禁前にコミュが出来るという珍事が生じ(たそうです。そもそも、未だに「コミュ」というのが良くわかりません)、なし崩しに公開になりました。凄い!情報管理の責任者であるべき人物がミクシィでフライング!すんごいミクシイ的な事件!最低最悪!!(笑)

 と言う訳で、次に出る作品がニューアルバムでありデビューアルバムである新バンドですが、正式名称は「菊地成孔ダブ・セクステット(六重奏団)」という物で、これは言うまでもなく「クンテット(五重奏団)・ライブ・ダブ」の発展型です。04年より足掛け4年間活動したクインテット・ライブ・ダブを解散させ(ラストライブを来年の1月に行います。詳細は後ほど)、新たに結成しました。

 メンバーはワタシ以下、クインテットからの残留組が坪口(ピアノ&エレクトロニクス)、パードン木村(ダブエンジニアリング、ターンテーブル、エレクトロニクス)の3人、ベースがペペの鈴木正人、全くの新顔がドラムスが本多珠也、トランペットが類家心平、という、ワタシが初めてやるハードパップの基本編成(+ダブエンジニア)によるバンドです。

 音楽の内容はアルバムを聴いて頂くとして、このバンドで、ワタシ初めて「バンド最年長」になりまして(菊地&木村44歳、坪口42歳、本多37歳、鈴木36歳、類家31歳)、しかもヴォーカルもアルトサックスも無しのテナーのみ、アルバムにはスタンダード曲もバラードも入っていないオールオリジナル、作曲陣はワタシと鈴木、坪口の3人、と書けば、マイルスマニアの方ならば大体お察しがつくと思われます。アルバムのセッション日数は3日間でしたが、これは「マイルス・スマイルス」「ESP」「ネフェルティティ」「ソーサラー」、所謂「セカンドクインテット・スタジオ4部作」が総て3日間で録音された事(「ナッシングライクユー」は例外として)に倣っています。

 ワタシが手がけて来たバンドの中で、糖度(スイートさ)を最も低く(ゼロに近い)設定したハードな物件ですので、淑女の皆様のお口に合うかどうか心配ですが、08年はメンバーを刷新した第二期ペペ・トルメント・アスカラール(現在アルバム準備中)とダブ・セクステット、そしてヴォーカル物ユニットの三本立てで活動しようと思います。お楽しみに。ごきげんよう。



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 *以前、当欄にも書いた「記録用の日記」より転載



      11/3 

2時~伊勢丹のグランドカーヴに届いていたサンサールのロゼを取りに行く。4000円也。
3~6時 野宮真貴リサイタル用のシングル曲編集~完パケ/サウンドイン(昼食 セブンイレブンの赤飯おにぎりと日本ハムの「熟成モモハム」)。

6~11時 ピットインスタジオにてニューアルバムの作曲(最終。テーマ作り4トラック→「パルラ」「エリザベステーラー1&2」「4対5アフロ」)

12時~夕食 二丁目の「楽庵」にてカニ味噌豆腐、烏賊明太、若竹煮(ソバ無し)

1時~帰宅 ケイ赤木「リキッドブルー」のライナー(1000)「kamipro」のインタビュー直し(4200&800)

 ストレッチ1時間 腹筋100 プッシュアップ100 背筋100 




         11/4

 
 1時~8時 東京ザヴィヌルバッハ新作録音(昼食ソイジョイ&コーヒー)。5曲終了/音響ハウス

 9時帰宅~夕食 セブンイレブンにて購入した「ソイジョイ」「味付け卵」とエビアン

 「速報」書く。

 ストレッチ1時間 腹筋140 プッシュアップ140 背筋140 「ブルータス」

「フィガロジャポン」「東京カレンダー」



     11/5

 

 1時~1時 ニューアルバムのダビング(トランペット&サックス)&編集。(昼食ソイジョイ&コーヒー)ダビングは本日で終了/サウンドイン

夕食抜き

 2時帰宅 ストレッチ1時間 腹筋200 プッシュアップ200 背筋200




     11/6

 
 1時~5時 ニューアルバムの編集(昼食ソイジョイ&コーヒー)。エフェクト以前のプレ編を全曲終了の予定だったが、2曲こぼれた(エリザベステーラー1&2)/サウンドイン

 6時~9時 ニュアーアルバムのジャケ写撮影、撮影中にインタビュー1本(松山晋也氏)

 9時~12時 「エスクアイア日本版」の「アイウエア特集」のモデル仕事。全員でスタジオを移動して、全員でモデルをやる。

 12時~新宿に移動し「ブリッコラ」でダブ・セクステットの納会(注*今年の仕事終わりなので)。ラマダン明け、食事&ワイン解禁と成ったので凄い事に成った。何を食べたか憶えていないが、記憶している限りだと

アンティパストのミスト
山鳩と薫製フォワグラ
チーズ、生ハム、オリーブのミスト
ポルチーニ、ポレンタ、魚のフリットのミスト
越前ガニのラサ
ボロネーゼのパッパルデッレ
馬とサルシッチャのグリッリア。

ワインはソムリエール氏の推薦でスプマンテを2本と赤を3本。それでも飲み足りないので食後にレチョート(注*イタリアのソーテルヌの事)を一杯。鈴木君はグラッパを頼んだ。珠也はビールとカンパリソーダを頼んだ。みんな良く飲み、喰うので嬉しい。一番飲むのは鈴木君で、一番喰うのは私だった(みんなドルチェを食べていたが)。どうしようかというぐらい旨い。

 4時半帰宅 ストレッチ1時間 腹筋100 プッシュアップ100 背筋100

 「PJ」「ニューメロジャポン」「格闘技通信」

 



       11/7



 昼食抜き(二日酔い&睡眠3時間)

 2時~代官山「晴れたら空に豆まいて」入り、南さん、佐藤さん、与瀬山さんとサウンドチェック、ごくごく簡単なリハーサル

 6時~長沼君とカフェでスケジュール調整、調整中に寝てしまう。

 7時~本番。素晴らしかった。

 10時~本番終了後、聴きに来ていたペン大生たちと語らい、帰宅、11/3に入手したサンセールのロゼを2杯飲んで寝てしまう。




       11/8


 5時~「クレッソニエール」で遅いランチ。杉原さんに頼んで、時間外だったがランチプレートを出してもらい、グラスシャンパンを一杯。ランチプレートは牛モモ肉のグリエに薄切りのポンムとロニョンのソテーを添えたもの、サラダ・リヨネーズ、人参のポタージュ、ムース・オウ・ショコラのブラン(最高)

 6時半~帰宅、「速報」書く。

 7時~Bunkamura入り。湯山さん、野宮さんと挨拶してからトークショー本番。面白かった。

 9時~サイン会。「Hananako」にサインする。これは面白い。

 10時半~帰宅後、「メトロミニッツ」(注*地下鉄で配っているフリーペーパー)のクリスマス特集号の取材&撮影。レチョート・ベッラ・ヴァルポリチェッラを持って(「お持たせ」の頁)近所で撮影後、9階でインタビューを受ける。開栓して取材陣と試飲。楽しかった。ライターの人がブルータスの「松本人志」特集の人で、「大日本人」の話をする(どこにも書けないが)。84年のブルータス歌舞伎町特集「歌舞伎町は傾く(かぶく)」を貰う。物凄い面白い。

 12時半~「ニューメロジャポン」の取材。「良い女とは?」という特集。面白かった。

 2時 仕事総て終了。夕食を採ってない事に気がつき、「チング」でサムゲタン。ストレッチ1時間 腹筋100 プッシュアップ100 背筋100 サンセール1杯。

 「美食の文化史」「チーズ図鑑」「ボルドー」「ブルータス(84年の)」




          11/9

 12時半~9階でファッション関係のウエブ(名匠失念→長沼に聞くこと)。パリコレの話と「服は何故音楽を必要とするのか?」の話。面白かった。

 昼食ソイジョイ&コーヒー

 2時~TBSラジオ特番「菊地成孔の、今夜は俺は一人で」(注*同局の、立川談志氏と太田光氏による「今夜は二人で」のパクり。レギュラーではない)の番宣収録。

 5時~EWEオフィスにて、ニューアルバムのジャケ写が上がって来たのでチェック&中島さんとオーチャードの「CURE JAZZ」公演用のストリングスアレンジ、及び来年から始まる第二期ペペ・トルメント・アスカラールの打ち合わせ。ニャタリやヒンデミット、ソレア&サイタのカヴァーの件。

 8時~ビルボード東京にて「ぴあ」の撮影&インタビュー。オーチャードホールの宣伝用。はじめてミッドタウンに行った。ヒルズ系はどこも同じだが、どこも好き。

 10時~「プレゴ・プレゴ」にて夕食、カプレーゼ、ボッタルッガのペペロンチーノ、鮟鱇のブロデット。シチリアのヌーヴォーがあったので一杯。食後にフランジェリコとティラミス。金子シェフの計らいでバローロの搾りかすで作ったグラッパを頂く。とても良い気分。

 12時半~帰宅「映画秘宝」の「オールタイムベスト10」アンケートと「速報」を書く。「TOKION」のインタビュー、ゲラチェック。ダブ・セクステットのアルバム名、曲名、曲順を最終決定し、デザイナー氏に送る。

 

 

 

海は足りているか

Nov-15-2007

 

 

 

 丸々4日間歌舞伎町を離れ、葉山は御用邸うらにあるパードン木村さんのスタジオでダブ・セクステットの制作最終過程(編集後のダブエフェクト化)を行っていました。途中、トランペットの類家くん、エンジニアの赤工くん(ワタシの全作品のエンジニアです。赤工くんが居ないとワタシは何も作れません)、ミクシィで大活躍のA&R(笑)、高見くん等が陣中見舞いに、そして坪口がカオスパッド(楽器ではなく、エフェクト用の魔法の箱)のプレイをしにやって来ましたが、それ以外は木村さんと二人っきりで作業をしていました。録音(全員で3日間)→編集(菊地と赤工くんとで5日間)という過程を経た音源を、ワタシと木村さんの二人でエレクトロニクス化する訳です。本日東京に戻りまして(そのままTBSラジオで特番を録りまして)、明日、銀座のスタジオで赤工くんと二人で最終編集を行い、いよいよトラックダウンに入ります(今回はトラックダウンが楽なのです。全曲おなじ編成で、同じサウンドなので)。

 木村さんの自宅スタジオの素晴らしさは、総てのインテリアデザイン雑誌の盲点と言えるでしょう。シンセサイザーからギターからサーフボードからスタジオ内装から家まで、総てハンドクラフトの男である木村さんのセンスは本当に素晴らしく、中目黒辺りのカフェブーム時代のカフェが幼稚園児の工作に見えます。ワタシが逗留するのは3度目ですが、今回はサンセールのロゼと、レチョート・ベッラ・ヴァルポリチェッラ持参で、夜は満天の星を見ながら中庭で一杯やれるという、仕事抜きだったらとろけてしまいそうなセッティングですが、類家君の素晴らしいトランペットをプラグインで電子音に変換したり、(本多)珠也のドラムソロにフィルターをかけてフィードバック発振させたりする作業に熱中していると、時間があっという間に過ぎて行きます。

 休憩時には湘南ラジオを聴くのですが、本当に素晴らしい。フィフティーズとハワイアンとクラシックとジャズばかりかかる。ワタシが「ユニヴァース」をやる上で、最も影響を受けたラジオ局です。食事は、三浦海岸の美味しい魚屋さん(当欄過去ログ参照)に行こう行こうと言っていたのですが、珠也のドラムをループさせてポリリズムのブレイクビーツを作っていたら、毎日店が閉まる時間になっていました。とはいえ、夜中に短いドライブをして、レゲエばかりかかるタイ料理の店に二人で行き、塩を溶かした辣油で炒めた鶏とカシューナッツとクワイや、卵と秋野菜の甘い炒め物で蒸した餅米を食べながら、奇妙なトロピカルフルーツジュースを飲み、秋の夜の海をずっと観ているのは、堪えられない物があります。

 行きと帰りは言うまでもなく、途中に一回ペン大の授業があったので、都合3往復したのですが、湾岸やベイブリッジを通るたびに、溜息を堪える事が出来ませんでした。カーマニアでもあり、スピード狂でもある木村さんは、高速をワタシの好きな速度でブッ飛ばします。英語にもフランス語にもある「パセティック」という表現ですが、辞書的には「悲壮な、感傷的な」とありますけれども、ワタシの訳ではやはり米語的に「目にしみる」としたい所です。コパトーンのアフターシェービングローションに「アンチ・パセティック」とあるのは、アレは<目にしみない>という意味です。

 ですからつまり、一気に視界が開け、東京湾が見えた瞬間、ワタシはパセティックの塊になって、こんなパセティックは久しぶりだ。もう、泣いているのかどうかすら自分で解らないほどパセティックだ。と、シトロエンのウインドウを空け、豪風を顔に浴びて、一気にたくさんの事を思い出し、解けてしまい、また思い出し、解けてしまい、それでもどんどん思い出し、もうこれでは思いが溢れてしまうので、窓から全部、海に放り投げて笑いました。思い出が一瞬にして後方に飛んで行き、きりもみ状に舞いながら、工業地帯の煙突の煙に消えて行く。まるで感傷的な王にでもなった気分。歌舞伎町の致命的な欠点は、港湾と河川が無い事です。

 それにしても。こんなにも飢えていたのか。と思うと、胸のすく思いでした。いつから東京湾を見ていないか。ということは、いつからパセティックになっていないか。と同じ事なのです。羽田辺りに引っ越したいな。免許を取って、サーブの黒いのと日産のプレジデントを買って。部屋で金魚を飼おう。観葉植物を育てよう。といつも思うのですが、どうしても新宿から離れられません。伊勢丹も高島屋も歌舞伎町も無い街で、行きつけの素晴らしいレストランの無い街でどうやって生きて行くのか、見当もつかない。

 今や感傷は我々の仕事なのです。しかし本当に感傷的に成ってしまうと、人は枕を濡らし、溜息をつくばかりで何も出来ない。実に因果な仕事だと思います。ワタシがパセティックに成る時の観照は唯一決まっており、それは、この国がやがて亜熱帯気候に成ると言う曖昧な未来なのです。「不都合な事実」という映画が胸くそ悪いのはそのせいです。80年代はフラミンゴとトロピカルカクテルが流行りました。あの頃、金がグルグル回転していた狂った時代に、我々は「コロニアルは贅沢」というシンプルなセンスを足がかりに、日本がハワイやインドネシアに成れば良いのに。或は、日本とインドネシアの区別が付かなく成っていた気がします。我が国は、景気が良く成って来ると、すぐに自分たちの国を亜熱帯だと思いたがる。ある種の熱病と言えるでしょう。歌舞伎町に帰って来ました。パリから帰った時よりも、遠くから戻った感があります。それではごきげんよう。





 いつもブログ読んでおります。菊地さんの音も本も人柄も(喋りのグルーヴ)大好きです。

昨夜、ブリッコラに初めて行きました。んもう、めっちゃくちゃ感動でした!雨の中行った甲斐がありまくりでした、本当に。

料理も去ることながらワインのセレクトも最高、そして鳩のローストにフォアグラを乗せたものを頂いた際、マネージャーの原品さんがリストに載せていないというシェリーをサービスしてくれたり又、この後のバーの手配までしてくれるという心遣いまで、何から何まで完璧なお店でした。パンも美味しかった!

菊地さんがお勧めしていなかったらきっと出会うことが無かったでしょう。菊地さんに感謝です。ありがとうございました。

これからもお慕い申し上げております。


 ×◎■




菊地成孔 さま


きのうやっっっとHanakoを入手いたしました。
伊勢佐木町の有隣堂で、最後の一冊でした。
でも、ぴしっとキレイです。

月に一度くらいではありますが、仕事のあいまにふらりと元町、石川町エリアで伊仏のランチをするのを楽しみにしています。
とくに仏は、わたくしもう三度のメシよりフレンチが好き、というか、
三度のメシがフレンチでもいい、というくらい好きなので、というか、
そもそもフランスパンと発酵バターが大好物なのです。

・・・というか、三度のメシどころか、そのあたりが現実、というところですが。

料理そのものだけではなく、レストランという場所も大好きです。
こんなにも手っ取り早く、しかも完璧に、独り身の中年女(あああ言ってしまった、でも事実ですね)
を心底から癒し、幸福感に包んでくれる場所をわたしはほかに知りません。

菊地さんのライヴ会場以外には。

ダブ・セクステット、わくわくするようなメンバーですね。
新譜発売が楽しみで楽しみでたまりません。
そしてそのライブも。今一番の楽しみです。

わたしは淑女のつもりですが、風変わりな淑女を自認しておりますので、たとえ糖度低かろうとも、いったいどれほどのハードさなのか、身震いしつつ待ち焦がれております。

クインテットのラストライブも必ずうかがいます。
イスファハンとスイートメモリーズをリクエストさせてくださいませ…

ひとつ気になりましたのが。
アルバム全曲オリジナルである、とのこと。
ということは。

ユードンノーはペペの方に入ったりするのでしょうか??
わたしの読み落としでしたら申し訳ありません。



○ ○◎




菊地様

こんにちは。
Hanako、拝見いたしました。
素敵ですね!
普段雑誌を買わないし、テレビもない生活なので私の知らない新宿を知ることができました。
たまには「思い出横町」に流れず、レストランを愉しんでみようと思います。

あとRestaurant Chartierのエピソード、可笑しかったです。
私もまた行きたい!と、嫉妬しながら読みましたけど…。
来年は長期滞在しようと助成金を申請中です。
Paris滞在中に偶然菊地さんのライヴがあったりしたら…と夢は広がります。

12.8の「生成孔(キナルヨシ)・デ-」ですが、調べてみたら最前列の席でした。ビギナーズラック!

 ×■◎





菊地成孔様

昨日は楽しいトークをありがとうございました。
湯山さんのエネルギーに圧倒されつつ、あっという間の時間でした。
湯山さんは山村紅葉さんにも似ているように思いました。
ジャンル分けと言ったらとても失礼ですが、
勝新太郎や坂田籐十郎はツルっとした質感が女性的で、湯山さんや山村さんは
男性的なオーラがあるような気がします。福々しさに惚れ惚れしました。

12月の2公演を楽しみにしています。
目に見えるような大きな痛手や喪失を感じなくても、
菊地さんのサックスや御本によって回復する。ということは
潜在的に落ち込んでいるのかもしれませんが、
菊地さんの音楽に出会って、風通しが良くなったように思います。
個人の感想ですが。。
本当に出会えて良かったと思います。
ということをサイン会で省略してお話したかったですが、
ピットイン3デイズで山下さんのライブに母と行った話などしてしまい、
次回の課題とします。

今後のさらなるご活躍も楽しみにしています。

追記:私はパークハイアット東京に隣接したビルに勤務していますが
菊地さんにいつか偶然(偶然が良いです)お会いしたいと思っている次第です・・。
是非ジランドール、ピークラウンジで。

■ ★○




菊地成孔様

こんばんは。

今日のトークイベントは
とても面白くて楽しい時間でした。
ありがとうございます。
ずーっと聞いていたい、
楽しいおしゃべりでした。

最後に「hanako」にサインして頂けて
嬉しかったです。
帰ってから雑誌を開いているので
部屋にエンジェルの香りが広がって
良い気分です。
この香りがいつか消えてしまうのかと思ったら
ちょっと悲しくなりました。

前から思っていたのですが
コンサートのポスターの写真がとても素敵です。
販売しないし、
公演が終わっても譲って頂けないそうなので
どうやって手に入れようか考え中です。
がんばります。

今日の感想をメールさせて頂きました。
では失礼致します。





今晩は。
昨晩、代官山に伺いました。素敵な夜です。
楽しそうな菊地さんの姿といい、南さんの居住まいといい、与瀬山さんの歌声は勿論、
演奏を見つめる表情といい。
沢山の意味で、まるで映画を見ているようです。
(与瀬山さんの為に椅子をどかしている菊地さんはやっぱりジェントルでした。)

シネマのような一夜を明け、今朝 lover man を聞きながら、電車の中から目に映る風景。
新宿のビル郡が近づき、過ぎ去る景色はシネスコープの映画のワンシーンです。



解けない魔法のような時間と空間に感謝を込めて。

来月、オーチャードホールの空間にてお会いできるのを楽しみにしています。

(cure jazzでのファンです。AXでも菊地さんをお見かけしましたがあんな風に歌うUAが
再び歌うjazzを想うと本当にドキドキします。それに菊地さんの歌声も!アルバム是非作って下さいませ。)

少しお疲れのようですが風邪など召さぬよう。


それでは。


■ □□



菊地さんこんばんは。

昨日、すごく久々に「クレッソニエール」に行ったら
杉原さんが私のことを「菊地さんの生徒」ってことで
おぼえていてくれて、ものすごいサービスしてくれました~。
1回楽器を持ったまま行ったときに、向こうから「うちの店は
ジャズミュージシャンの方が~」と話しかけてきて、
そのときもサービスしてくれたのですが、今回もワインはガンガン
注がれるわ、コーヒーどころかデザートまで出してくれるわ
うれしいやら申し訳ないやら、でした。
鹿食べてきましたよ~。秋をとおりこして、なんか冬な気分になりました。
一応、ご報告まで。

昨日掲載していた「シャルティエ」の写真とエピソード、すごく好きです。
パリに行くたびに、毎回初日に行ってます。何かもうオルセーとか行くのと
同じような気分で、詣でています。
毎回ピンポイントで変わった食材のものを注文してしまい、ギャルソンに
「本当にお前はそれを食べられるのか」なんて確認されています。

今回のNumeroの記事がとても面白かったです。なんかもう年末感漂いますね。
この間、年末のコンサート用にドレスを買いました。
イランイランのブラックとグリーンのミニドレスで、我ながらものすごく似合います。

あとはグローブはロングのほうがいいかショートのほうがいいか、とか
靴はルブタンのメタリックなものがいいか、クロエのサテンのものがいいか、とか
そういう楽しい選択に頭を悩ませているところです。

ではでは。


☆ ◎★



菊地様

こんばんは。地方のファンです。
お風邪の具合はいかがですか?

今日,仕事でやなことがあって,本屋さんでグダグダしていたのですが,
「Numero TOKYO」で,菊地さんのウェット&メッシーなパーティの企画を拝見し,
いきなりテンションがあがりました。
実現したら完璧なインスタレーション作品になるでしょう。
シャネルの水着はこういうパーティのためにあるんですね。

プール・パーティのはじけた感じも,
クール・ストラティンのディーセントな感じも,
UOMOのジャケットのヤバい感じも,
みんな好きです。
ていうか,やっぱりその振れ幅はズルいです。

ところで,
ソーダ・ファウンテン=本物の噴水というのは,菊地さんのアイデアですか?
プロデューサーの方がまじめに検討されているのが可笑しかったです。

ではまた。
お身体御大切に。

 ××★



 菊地成孔さま

 はじめてお便りいたします。最近あなたを知り、あなたに関する物を総て買い求めました。たったの200万ほどで、あなたの作品は総て買う事が出来ました。半年で一気に総て鑑賞しました。こんなものがこの世にあったのか。と震える様な想いとともに。

 一番好きな作品は「ヴァンドーム・ラ・シック・カイセキ」と「野生の思考」と「スペインの宇宙食」です。盗作や剽窃が最も多い作品であって、そこに感動します。ファインデザインです。

 あなたのファンの女性はファザコンが多いと思いますが(芸大の授業にももぐらせて頂きましたが、思った通りでした)、私はレズビアンです。あなたが最も理解を示さないのはレズビアニズムだと思いますが(懐が深いあなたは、「CURE JAZZ」に若干のレズビアニズムを含ませていると思いますが、それは他人事のようです)、そしてレズビアニズムといっても様々な形がありますが、少なくとも私には凄まじい訴求力があった事をお伝えしようと思いまして。

 あなたの存在を私に知らせたのは、私の恋人です。彼女もあなたの熱狂的なファンです。わたしたちは、あなたとだけなら、喜んでペニスを受け入れられるという話をよくします。お嫌だと思いますが、あなたからは雄の匂いがしません。

 オーチャードホールには二人で伺います。二人ともミュウミュウです。女性同士のカップルを、あなたがどう受け止めるか、よかったらお聞きしたいです。

 

 

年に1回ほどの緊張

Nov-17-2007

 

 

 

木村さんのDIY自宅スタジオに対する反響が多く寄せられております。葉山にある一戸建ての日本家屋を木村さんが徹底的に改築し、非常に陳腐な言い方をすれば最早モダンアートの領域にあるのですが、とにかく来なければ全貌は理解出来ない。ここを訪れた人々は、木村さんのご近所さん、プライヴェートな友人は言うまでもなく、音楽家ではUA、ZAK、マイク真木、ケイソン、等々まだ少なく、木村さん自身は、ちょっと問題あるんじゃないの?と言うほど飄々として、山っ気の全く無い人なので、そういう意味では当欄の写真は貴重かも知れません。30枚ほど撮って来ましたが、頃合いを見計らって追加掲載する事にします。

 昨日と本日で、ダブ・セクステットのTDを5曲すませました。情報をもう少々公開しましょう。来週にはマスタリング、12/19リリース、オーチャードホールでは先行発売するとともに、「CURE JAZZ」の公演に、このバンドの類家君がゲスト参加します。

 アルバムは全8曲。タイトルは

「THE REVOLUTION WILL NOT BE COMPUTERIZED / NARUYOSHI KIKUCHI DUB SEXTET」」

 というもので、無理矢理訳すならば「革命はコンピューター管理されない」といった所でしょうか。さる有名なアーティストの有名な曲名のモジリである事は言うまでもありません。全曲名も列記しておきます。

Dub liz (KIKUCHI)
Susan tsontag (KIKUCHI)
Parla (KIKUCHI)
Dub sorcerer(KIKUCHI)
Carroline champtier(KIKUCHI)
Invocation (KIKUCHI)
AAAL (SUZUKI)
Betty go-round (TZBOGUCHI)


 と、アルバム名、曲名を列記したりして、実に景気が良い訳ですが、実のところ本日はもう大変な日だったのです。持って生まれた鈍感さで、滅多な事では緊張しないタチなのですが、昨晩は緊張で眠れませんでした。こんなに緊張したのは何年ぶりか。「エスクァイア日本版」の「ドキュメンタリー映画特集」の巻頭対談を行ったのですが、ウエイン・ショーター氏とも、筒井康隆先生とも対談させて頂き、その都度大いに高揚はした物の、緊張で眠れない等という事はありませんでしたが、やはり今回ばかりは。筒井先生との時は感動でほとんど一言も喋れず、大谷君に「一言で良いから喋ってよ。記事が書けないから」と怒られたものですが、本日は全く違った意味で、ほとんど何も話せませんでした。とはいえ、それが正常であると自信を持って断言出来ます。

 という訳で蓮實重彦先生とワタシの対談は12月売りの「エスクアィア日本版」に掲載されます。特集内容と無関係なので掲載されないと思いますが、対談中最高に盛り上がったのは何と「デス・プルーフがどんなに素晴らしいか」という話でした。お楽しみに。

 その後「レコード・コレクターズ」誌のインタビューを受けまして(インタビュア松山晋也氏)、これは「オンザコーナーコンプリートボックス」に関するもの。更にその後「フラウ」に連載と別枠のインタビューを受け、これは「美味しい本棚30センチ分」という物です。「オンザコーナーコンプリートボックス」と「ミシュラントーキョー」に関しては、まだ様々なメデジアで書いたり喋ったりすると思われます。

 明後日はTBSラジオで1時間の特番をオンエアします。ほとんど何も喋っていないに等しいのですが(新しいネタも特に無く)、「AMからこれが流れて来たらびっくりしつつも良い感じではないか」という曲を3曲程セレクトしましたので、曲だけでもお楽しみに。

 と、こんな、平然と書いている様に見えますが、凄まじい緊張から解放され、少々変な具合に成っています(笑)。早く寝てしまおう。ごきげんよう。


 <キャプション>

 「ブリッコラ」にて。最後のタウラージ・ラディーチ98年。筆者の「ブリッコラ」での官能を支え続けてきた赤。髪の毛、木樽、ベリー系の果実、薔薇、パンの焦げ目、ケミカル感などが渾然一体となったセクシー極まりない逸品。とうとうストックが底をつき、これが最後の一本と成った。「菊地さん、良かったらお持ちに成りますか?」と、身に余るお言葉を頂戴するが、身を切る思いで辞退、抜栓直後の2杯だけ頂き、後は店員の皆さんや、タウラージのファンの方々で召し上がって下さい。と、別れを惜しみつつ味わった。次回からはしばらくマスワンをベースにする予定。とはいえ次なるグラスワインのインメニューが楽しみで仕方が無い。因に、筆者が12/6のオーチャードホール、ペペ・トルメント・アスカラール公演の幕間にて出したかったのがこれなのだが、極端な品薄につき、ビスコンティの「山猫」の主人公の名を冠した事で有名な「タンクレディ」になった。

 最後のタウラージに合わせる料理はこれしか無い。蝦夷鹿のグーラーシュ。グーラーシュはハンガリー発祥の煮込みで、ブロードを使わない分ラグーよりも濃厚であり、イタリアンレストランでは余りお目にかかれないが、山岳系の味を得意とする北村シェフの本領が発揮された、驚愕と官能の逸品。筆者は東欧圏、ゲルマン圏へのサーキットを過去かなりの日数こなしており、グーラーシュとシュニッチェルの日々を送ったが、間違いなくこれが一番美味しい。言うまでもなくジビエ料理なので、秋のうちにお試しあれ。添えられているのは白人参のソテーとオレンジを隠し味に加えた根セロリのピュレー。共に絶品。

 たった一枚では全貌が掴めぬ木村邸の一室。筆者の寝室は、木村さんの愛犬スーちゃんの墓前であり、ビンテージマイクの倉庫であり、最新オーディオ機器がセッティングされた日本間にしつらえられた。

 

 

アルバム完成、ミシュラン発売

Nov-21-2007


 本日、無事ニューアルバムのマスタリングが終了しまして、ジャケットも完成(明日、当欄で初公開します)、後は発売を待つばかりと成りました。既に旧聞に属しますがHanakoも無事発売され、マイルス本も脱稿、野宮真貴さんのリサイタル用新曲も完パケし、蓮實先生との対談も終わり、これで残す所、年内の大仕事は単行本「服は何故、音楽を必要としているのか?」の執筆とオーチャードホールのライブのみになりました(中小仕事はまだまだ山ほどありますが)。

 まだグラスノスチ出来ませんが、そして(感覚的には未だ、明日をも知れぬその日暮らしであるワタシには)基本的には余り好ましくない事なのですが、未だ11月だと言うのに、既に来年の予定が決まりはじめています(「好ましくない」のは、言うまでもなく、決まった懸案が。ではなく、未来の予定が、まるで商社マンの用に決まって行くと言う事自体が。ですぞ。もうクオヴァディスのスケジュール帳は捨ててやろうか。しかし手帳自体が好きなので捨てられぬ)。

 二件のみご案内するならば、ダブ・セクステットはツアー・デビューが決まりまして、即ち東京でデビューライブをするのではなく、先ずはツアーに出て、終えてから東京でやります。スタート地点は博多もしくは岡山で、どちらがダブセクステットの最初の地に成るかは現在検討中ですが、以後北上する形で名古屋、神戸、仙台と5カ所サーキットし、東京で実質上のデビューライブを行います。各地の皆様との逢瀬を楽しみにしております。

 そして、来年は慶応義塾大学の三田の方で講義を持ちます(芸大と国立は今年で終了。国立は2年間の就業期間の最後の授業として、来る11/24に「純ジャズ理論史」というテーマで5時間の講義をします。情報は公開出来ないので闇でゲットして下さい。最後の授業ですから、モグリフリーとします)。基本的には今年芸大で行った、「音楽と映像の統一理論の可能/不可能性」と同じ内用ですが、ゲスト講師との対談を増やそうかと思っています。サーキット&慶應菊地クラス、詳細は当欄もしくはマネージャーの速報にてお待ち下さい。

 さて中小仕事(内容の重み。ではなく、単に文字量などに還元した時の)は現在も刻々と進んでおりまして、最近は「菊地の大仕事よりも、小仕事が好きだなあ。手抜き感がまったりして」「音楽も著作もラジオも大学の講義も知らないが、雑誌にちょこっと載る、コメンテーターとしての菊地だけでも結構楽しめる」等という実にマニアックな方も存在が確認されておりますが、例えば今皆様が地下鉄に乗りますと「メトロミニッツ」というフリーペーパーがありますが、それに載っておりますし、「ブルータス」をお立ち読み頂くと、「映画コンシェルジュ」というバイトをやっておりますし、「kamipro」では、如何に新聞がインターネットを恐れているか、そしてワタシが秋山支持だという事が書いてあり、我ながらどれもなかなか面白いです。

 とはいえアナタ、今、「面白い」と言えばミシュラン・トーキョーを於いて他ならぬ。ダントツで一番面白い。ワタシも一応グルメ業界人の端っくれとして(ミシュラン仕事の最初の一発は「フラウ」での連載に成ります)発売よりも早く一覧表をゲットしましたが、「ミシュランの調査期間」が終わってしまったのは言うまでもなく(この1年半というもの、レストランに入り「難しい顔をして皿の裏側やフォークを見つめる」というイタズラをどれだけ楽しませてもらったか)早刷りを持ってレストランに行く楽しみも発売日までだと思うと寂しい程です。

 因に昨日は深夜2時から4時までブリッコラに、本日はつい先ほどまでクレッソニエールにおりましたが、「コレ、早刷りです。うふふふふふ」とチラつかせると、どんなにクールなギャルソン/カメリエーレ氏でも目がギラッと輝き、30分位は釘付け&語りまくりとなりますね。詳しくは発売後に書きますが、日本の料理界はじまって以来の大事件である事は間違いありません。20年前、いや5年前ですら「<ミシュラン3つ星の寿司屋>が銀座に誕生」というのは、SFの想像力に属する話題だったのですから。

 我が国には「これだけで飯が三杯喰える」という、誠にミシュラン的な慣用句がありますが、30杯は行けるでしょう。仏、伊、中、日すべての料理業界が大変な騒ぎに成る(成っている)と思います。とりわけ、カンテサンスが三つ星、ガニエールとトロワグロが揃って星二つ(トロワグロの皆様、2つとはいえスターゲットお目出度うございます)、コートドールやレカンが星無しを獲得したフレンチ業界は、ある種の血の海というか、フランスという国の、血も涙も無い、エグエグの格付けの伝統(ミシュランではなくゴーミヨーによってですが、自殺者を出している事はご存知ですね)に初めて触れ、慄然としている事でしょう。

 あんまり話が分からないなあ。という方は「ジャズ・ミシュラン」もしくは「ダウンビート・トウキョウ」をご想像下さい。フランスから(アメリカから。でも良いですが)覆面/匿名(ここ重要)のジャズ評論家が派遣され、1年半に渡る調査の結果、「3つ星/大西純子、日野皓正、秋吉敏子、前田憲男、PEZ、二つ星/渡辺貞夫、渡辺香津美、山中千尋、菊地雅章、上原ひろみ、峰康介、一つ星/大友良英、渋さ知らズ、TOKU、ディメンジョン、星無し/菊地成孔」などという事に成ったら、当人、スタッフ、ファンがどういう対処法(精神的な)を採るか、想像するに、ちょっと面白いですね。スイングジャーナルやミュージックマガジンのような、(今では)誰も価値や権威を認めていない媒体のランキングでは残念ながらこういうワクワク感は望めません(両誌がダメだと言っているのではありません。国民的な価値や権威、即ち公正/公共/一般性が認められるランキングは、今やこの国にはどこにも存在しません)。結果はどうでも良いのです。スポーツの結果でも、売り上げでも、テストの成績でもなく(実数/整数的な序列ではなく)、顔も解らぬ目利きによる評価が一覧表に並ぶ。という事実自体がスキャンダラスなのですね。

 ですから「ネット内のシロウト批評なんて」という否定は容易く、じゃあ「覆面の唯一的な批評権威」が存在したらオマエはどうするのか?というのは、総ての結果が実数で出るアマチュアアスリートや商社マン、選挙に出馬する人々、といった人々以外の、総てのクリエーターにとって遍く根本的な問題であり、どれだけ日本という国が(そういう意味では)事なかれの優しい国なのか解ります。何せ欧米では、批評家すらランキングされるのですから。

 かくいうオマエはどうするのじゃ?さぞや気の利いたコメントを出すのだろうなあ。と言われてしまいそうです。考えた事もありませんが、今、一瞬で考えつく限りでは、3つ星がついても星なしになっても答えは同じ。「いやあ、さすがフランス人はお目が高い。日本人やアフリカ(アメリカでも何でも可)人とはぜんぜん違いますなあ」とコメントするでしょう。まあ、対仏型の嫌らしさですね(笑)、今のうちに英訳/仏訳して諳んじられる様にしておかないと(笑)。

 「評価(される)」という概念は、神/両親があなたのどこに、どのように存在するか/しないか?という事と不可分(どころか、ほぼそれ自体)です。過去、ファザコンの方々の「パパ、わたしを見て」という気概を利用するだけ利用し倒した履歴のある者としては(笑)、世界各国でもっとも多くの星をゲットした東京という都市に住み、活用(毎度おなじみですが、料理はインターネットでは配信されません)している事を素直に喜ばないと、天罰が下るという物でしょう。

 それにしても、ミシュランが11月に発売されるのは食欲の秋。という事でしょう。今回、「星が多すぎて」という理由で、「星無しの<お値打ちビストロ/ブラッスリー>」が掲載されないという特別措置がとられる事で(結構凄い事です。これは)、残念ながら掲載されなかったクレッソニエールですが(これは冗談ではない。本気であります。ブリッコラも然り。というかブリッコラはオープンして半年弱ですからなあ。これは仕方が無い)、本日頂いたフォワグラのソテーは見も心もトロケる絶品でした。

 ブランデーでフランベされ、ポンムとレザンのソテーが添えられた、つまりは一般的なブラッスリー料理そのものですが、ソテー時に染み出したフォワグラの脂と詰めたマデラ、焦げた果糖のマリアージュに於いて、はっきりと完璧であると言えます。10個出されたら、歓喜とともに10個食べていたでしょう。インメニューしておりませんので「菊地さんのブログで読みました」と言って、無くなる前にガンガン注文して下さい。湯山さんとのトークショーで申し上げた「ムース・オウ・ショコラのブラン」は、オーダー殺到につき、何と既に原料のショコラブランが底をついてしまったそうです。「クリスマスには出そうと思います」との事でしたので、ネクストチャンスを狙いましょう。え?写真?余りの旨さにカメラを持っている事すら忘れてしまいました。自分が野生の花になってしまった気分。演奏中と食事中と性交中に独特な物ですね。それではごきげんよう。

 

 

表1、表3、表4

Nov-22-2007

 

 

 

本日は芸大の講義(講義中もアナウンスしましたが念のため。次回の講義は12/12で、それで年内最後と成ります。来年は1/9、16で、23がテストです。テストはありますが、成績はつけません)、終えて渋谷はBumkamuraに向かい、ドゥ・マゴでカフェオレを飲んで一息ついてからル・シネマで「タロットカード殺人事件」を観ました。

 <オマエがあれを観たりなんかしたらスカーレットヨハンソンの競泳用水着姿でおかしくなってしまうに違いない。この助平め>と目される事は致し方ありませんが、さほどでもありませんでした(彼女の水着姿に魅力が無かった。という事ではありません。映画が適度に素晴らしすぎて、フェティッシュな気分に成れなかったのです。それにしても21世紀に入り、シェイクスピア・コンプレックスみたいな物があちこちで群発していますが、ウッディ・アレンのは流石に良いですなあ)。それよりも、帰りにちらりと寄った109の方が遥かにフェティッシュでした。

 ワタシは月に1~2度ほどは渋谷に行きます(昔日、NHKの「ポップジャム」という番組に出演した際、「渋谷は近いうちに秋葉原と同じに成る。もう兆しがある」と発言しましたが、ほぼ直後に「アキシブ系」なる珍妙な物が実際に出て来るとは思いもよりませんでした)が、必ず寄るのは東急本店と109です。最近そこにドゥ・マゴが加わったのは過去ログ参照であります。

 ワタシのモード系/クラブ系の仕事をマークされている方ならばお解り頂けていると思いますが、マルキューの音量とミックス具合は未だ定点観測に値します(ゴスロリの聖地、丸井新宿ヤング館は、韓流と並び、ライフルで撃たれたかの如く勢いを失ったので)。やはり昔日、ワタシは「ギャルの声がハスキーなのはマルキューの音量が大きいからである」と発言しましたが、最近ギャルのハスキー度が下がったなあと思ったら、案の定マルキューの音量が下がっていました。等と書くにまるでアカデミズムの徒であるかの如きですが、要するにたとえばPJはやはりマルキューのショップが一番よろしい。という訳です(因にAAは代官山ですが)。もちろん事はPJだけではありませんが、BABAという存在はさすがにワコールにもチャコットにもありませんので。

 ハスキー度の低下が何の低下/増加とリンクしているかは皆様のご想像にお任せしますけれども、何れにせよ、近い将来ブラックミュージックのウエアはパリモードと癒着する筈で、これはブルースからジャズ、スイングからジャンプへという流れのリヴァイバルですが、MTVをご覧に慣れる方には「最近の<ニゴールデンアイ>見てる?」という問いかけで充分でしょう。ロスでの村上隆氏のレトロスペクティヴ会場でファレルとハグするニゴー氏は野球帽にスーツでした。カニエ・ウエスト氏のママであり、ビジネスパートナー/ボスであり、大学のドクターでもあったドンダさんが急逝され、ご冥福をお祈り申し上げる他ありませんが、事の進行には影響は無いと思われます。ニューヨーク派の方ならば「デレク・ラムともコラボ始めましたよ東海岸は」と言えば充分でしょう。

 「今回は何か、始めから最後まで、さながら暗号の様ですなあ。ぜんぜん充分ではない」というお声を頂戴しそうですが、さきほどタクシーを飛ばして四谷の「こうや」に行って来たのですが、若干味が落ちた様な気がしてガッカリし、「い~ぐる」に寄るのを止めてしょんぼり帰宅したので、解りやすく上述する。という意欲を失っているのかもしれません。とはいえ、そんなに悪くもないですね読み返してみるに。たまには暗号も(文節のシャッフル実験。どこまでシャッフル出来るか。最近の興味)。

 とさて、これがニューアルバムのジャケット(最終稿なれどデモ段階。正規発売レヴェルの物は後ほど)であります。革命志向という景気の良いリビドーを持った青年諸君などはタイトルを読み終える前に誤解してしまいそうな名前ですが、言うまでもなくこのアルバムは録音からマスタリングまで、制作過程をほぼ総てコンピューター制御(コンピュータライズ)されており、即ち革命ではない。「革命かモードチェンジか?(革命は垂直的で急激なモードチェンジであり、モードチェンジは水平的で遅延された革命である)」という二元論は来る08年3月に刊行されるマイルス本のビハインドテーマであり、12月に発売されるこのアルバム、2月に発売される「服は何故、音楽を必要とするのか?」と、同じテーマに基づく連作を形成しているのであります。お楽しみに。明日はDJのミズモトアキラ君とハッスルを観戦に行き、そのまま花園神社の酉の市、もしくはブルーノート東京のゴンサロ・ルバルカバに行きます。ごきげんよう。

 

 

 

ハッスル酉の市

Nov-23-2007

 

 

 

「毎日更新されると読んで味わっている暇がない。まだ<海は足りているか>を噛みしめている最中なのに」「毎日日記を書くというのは今やシロウトのすることです。菊地さんは数日おきにして下さい」というメールを頂戴し(笑)、なるほど、これは少々控えねばいけないかなあと思っていた一方、「小西(康陽)さんが突如インターネットに目覚め、毎日日記を書いてますよ」という話を聞き、世間は一体どうなっているのだろう。正に乱世なのだなあ。乱一世なのだなあと腕組みをし、あれほど忌み嫌っていたボージョレ・ヌーヴォーが今年に限ってはちょっと美味しく、ついつい飲んでしまう事に舌打ちが止まらない、新宿の舌打ち男爵、天才ミシュラン暗記少年役に挑戦。の菊地成孔ですが、本日はDJ/音楽家/文筆家/旧友のミズモトアキラくんと5年ぶりに再会し(彼が司会進行を務めるイベントの、来年一回目のゲストになるので)、仕事の打ち合わせをしてから後楽園ホールに向かい、ハッスルハウスを観戦、終了後、一人で花園神社に向かい、酉の市で熊手(というか、置物)を買って帰って来ました。

 「小川のいない(HGと天竜がエースである)ハッスル」は、何ともコメントのしようがない物です。テレ東のオンエアを得て、会場はプヲタでない人々で満席御礼。
テレビを失って滅びた帝国(の半分)が、テレビを得て再び繁栄。でもそれで良いの?スーツ姿の、彼女連れの若サラリーマンが多かったけど、川田に向かって坂田が「このウガンダ!」と言ったとき、大して湧かず、前の席のカップルの「ねえ、何て言ったの?」「<この馬が!>って」「そうかあ」っていう会話があったけれども、これで良いの?悠々たる編集者/論客としての山口さんのメディア論、プロレス論、興行論って、どの程度正しかったの?という問いをハッスル以外、インリンの怒った顔は安定してとても美しい。としか言いようがありませんでした。ワタシの今年最初の後楽園ホール興行は「マッスル」でしたので、そして最後が恐らく今夜なので、違いが鮮やかすぎました。「プロレス興行に於ける<地上派>の意味」は、今後のハッスルとマッスルが明らかにして行くでしょう。何れにせよ、過去のそれとは全く意味の違った物に成ると思います。

 花園神社の酉の市はこちらに越してから毎年伺っており、ワタシの商売が皆様から御贔屓を頂戴し、何とか繁盛している。と申し上げて吝かでないのもその御陰かも知れません。何人かの方にお声をかけて頂き、贔屓にしている熊手屋さんには「先生!テレビ観ましたよ英語のクイズ!テレビのときと顔ぜんぜん違うねえ!近くで見る方がいい男!」等と世辞を言われ、嬉し恥ずかしとはこの事。ワタシは本当にお祭りが大好きで、アンドレ・パザン流にフェルリーニと発音するに、特にワインを毎日飲む様に成ってからは尚更<人生は祭りだ。共に生きよう>と、半ば本気で思っているバカも大バカですので、酉の市に集う、入れ墨に角刈りの、新宿のダンディたちを眺めているだけで(台湾マッサージの青年達や、行きつけの寿司屋の大将、キャバクラの淑女達、ホスト諸君達なども続々登場)、ああ、本当にいろいろな事があったなあ。これからもいろいろな事があるのだろう。そして、すべてこれで良かったんだ。ワンカップ大関さえ飲めれば、自分の少々ニューロティックな人生は、更に完璧に成るに違いない。しかしそれでいい。不完璧な人生をこれからも生きよう。と、心の底から思っている間にも、「よー。キキキ・キキキ・キキキッキ」という、実に景気の良い拍子木の三本締めの音が一晩中泊まらないという訳です。ごきげんよう。





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 値段はあって無きが如し。「先生、今年のご予算は?」と聴かれ「2万円かな」と言うと、「はい菊地先生お宝2万円-!!」とダミ声で絶叫され、こちら登場。


 日本人の空間デザイン感覚の極北。「えー?これがあの花園神社の敷地い?」と毎年びっくりする。胎内的な入り組んだパノラマによって、敷地を実際の10倍に錯覚させる作法。文化住宅に住み、老朽化して取り壊した跡地が「こんなに狭かったのか」と驚いた。という経験がある日本人も少なく成った。

 
 オデン、煮込み、栄螺、飯蛸、焼き鳥、烏龍茶を座って。ベビーカステラ、タコヤキ、大判焼きを路上で。もちろん、とても良い意味で、総てまずい。<縁日の食べ物はムードが80%であり、帰ってから食べても旨くはない>という定説は、縁日の屋台が元祖オープンキッチンである事も含んでいる。とはいえ帰ってからも旨い物もある(実験済み)。酉の市では必ず一軒しか出ない「鮎の塩焼き」である。

 

 

国立/ラスト/DVD

Nov-25-2007

 

 

レクチュアラーとしてのキャリアも、御陰さまで5年になります。02年のアテネフランセから始まり、非常勤で通年以上講義をおこなった大学は東京大学、東京芸術大学、国立音楽大学の三校、特別講師としてスポットで講義をおこなった大学は早稲田、法政、慶應湘南などがありますが、常勤であるアテネフランセ映画美学校/音楽美学講座と、私塾であるペンギン音楽大学に加え、今年は東京芸大と国立音大という二つのコンセルヴァトワールで週に一度の授業を持っていたので、過去もっとも授業数/学生数の多い年となりまして、かなり充実した講師生活と成りました。

 本日は、2年間就任した国立音楽大学の最後の授業でした。残念ながら、2年目の後期、つまりここ数ヶ月はマイルス本やニューアルバムその他、当欄をご覧の皆様はご存知の、秋に向けての大仕事追い込み時期とぶつかり、結局一度も授業を行えず、来年の年間予定を鑑みるに、今後も授業は正常に行えないと判断し、教務課と折衝した結果、最後に4時間の特別講義を行い(「純ジャズ理論史」というテーマでしたが、これは例のマイルス本にも入ります)、それを後期の補講として消化したと看做し、退職。という形を採らせて頂きました。総ての関係者、そして総ての生徒の皆さんに感謝します。

 やはり最大のネックは、西部新宿線で新宿から最低で通勤に片道1時間かかってしまう。というリスクでした。ワタシがバカであることは周知の事実ですが、国立音大が中央線国立駅前にあるのだと信じていた事自体は大したバカさではありませんが、ガイダンスや懇談会で実際に二度ほど国立音大(玉川上水にあります)に行きながら、それでもまだ中央線の国立駅前だと信じ込んでおり、JRに乗って30分で行けるな。と楽観視していた事には、我が事ながら驚きを禁じ得ません。

 「あれ?こんなに時間かかったっけ?こんなに早く起きないといけないの?国鉄の駅から30分じゃなかったっけ」と、授業の3回目位まで、本気で不思議に思っていたのです。知らない間に、自分が把握している以上に脳に問題があるのではないか。しかしまあそれはそれで良いかな楽な感じで。と、どんどん良い具合にバカが進行して行きます。

 よくある話ですが、最大のリスクは最大のリターンでもありまして、週に一度、西部新宿線の拝島行きに乗り、乗る前に「スープストックトーキョー」で軽く食事をして、スポーツ新聞とエビアンを買い、ちょっとした小旅行をするのは、かなりの癒されぶりでした。癒されると言っても、郊外の自然と玉川霊園の涅槃のオーラに。という事ではなく(それにも少々、癒されなくもないですが)、むしろ帰りですね。

 ワタシは西新宿方面にはあまり出歩かないので、西武線の駅で降り、ペペの4階にあるパフュームショップ「パルフェ」でテュエリーミュグレーのエンジェルを買って(この香水を扱っているショップは少なく、ワタシが購入するのは、今やこちらとシャルルドゴール空港だけに成ってしまいました。昔日は美しい店員さんに「ファンの方もよくお見えになってますよ」等と言われたものですが、その店員さんは辞めてしまい、今では「何故か女性用のパフュームを定期的に買いに来る中年男性客」として、やはり美しい店員さんに「いつも有り難うございまあす」等と言われているのですが、伊勢丹/高島屋/ルミネ派としましては、ペペで買い物をし、あの雰囲気を味わうのはこの機会しか無く、非常に癒されるのであります。

 そしてその後、香水店から一転し、パチンコやの横っ腹にあるDVD&VTRのショップに寄り(いつでも店内にフィフティーズが流れている、最高の店)、ドえげつないアダルトヴィデオやZ級バカ映画を大人買いしているうちに夕方に成る。つまり、玉川上水で昼にお嬢様方を相手に授業をし、電車に乗ってどんどん新宿に戻り、駅ビルで香水を買い、そのまま歌舞伎町にアクセスし、ジャンクな映像を買い漁っているうち夕方に成る。これはもうタマランというか、癒されるやら高揚するやら。すっかり野良犬キブンでミラノ座からコマ劇場を経由して歌舞伎町を縦断、部屋に戻り、夜の帳が降りるのを待つ。というのは格別な物がありました。この感じが生活から失われてしまうと思うと寂しいやらほっとするやら。国立とともに、来年の1月で東京芸大も終了しますので(こちらは最初から1年契約できちんと授業数をこなした上での無事終了)、タクシーで上野に向かい、言問い通り沿いの下町風情を眺めながら講義録に目を通す。という愉しみも失ってしまいます。

 「講義の後、時間が余ったら、上野の有名なあの店この店で食事をしよう。アメ横を流して派手なスカジャンを買おう」と思っていたのですが、一度も果たせていません。とはいえ芸大の学食は素晴らしい(過去ログ参照)。東大時代は授業よりも早く入って、校内にある「ルヴェソンヴェール」で、池や森を観ながらエクルヴィスのオウレットウや鴨などを食べていたので、チキンカツとカレーとハンバーグが所狭しと並んだ皿はこれも上野の洋食。あと4回ほど食べられるかと思うとうっとりしますなあ。

 来年は慶応義塾大学の三田で通年の講義を行いますが(内容は今年、芸大で行った物と基本的に同じ、)、三田に通う悦び。が多いと良いなあと思います。とはいえ、都内を車で移動する限り、何の悦びも無い。等という事はワタシには起こりえません。タクシーがあの「タクCM」さえ積んでいなければ(でも「ダンシング星占い」だけちょっと面白いのが癪に障ります)。

 今は、買って来たアダルトヴィデオではなく、DCPRGの最後のDVD作品、「ミュージカル・フロム・ケイオス3~花旗~」を観ています。既にこれは完成品で、来る12/14&15に渋谷の映画館で公開され、ワタシと監督の夏目現さんとのトークショー等もあるのですが、ワタシが発売/公開前に観るのはこれが最初で、そして最後なのです。内容に関しては総て夏目さんにまかせたのですね。

 結論から言うと、なーかなか素晴らしいです。公開/発売前に情報を流すのが躊躇われるような作品なのですが、一応断っておくと、これは所謂「ライブDVD」ではありません。何せ、1曲通して収録されている曲が一切なく、1曲どころか、1分以上流れるライブ映像が一つもないのです。では、どんな作品に成っているかと言うと、、、、やはりこれ以上は書かない方が良いですね。ごきげんよう。



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 国立最後の授業。このうち3名程がモグリ。「テストもしないし、出欠も取らない。全員の成績を優とし、全日出席とするので、聴きたい人だけ出る様に。楽器のレッスンもあるだろうから、時間は有効に使いたまえ」と言うと、国立音大ではこうなってしまった(笑)。因にこの方針は、どの大学に於いても同じで、他大学では何故かこうならない。常に5~6名の生徒と(この教室で)ゆったり授業をすると言う、贅沢な時間だった。

 久しぶりのパリ新宿、伊勢丹周辺。「Hanako」効果によって、紹介した総ての店の集客が増えている様で、嬉しい限り(当欄にマメに書いていないだけで、相変わらずどの店にも通い、喰いまくり飲みまくっている。因に本日はクレッソニエールでプーレのロティとボルドーの「ニュメロ・アン」でもうメロメロ)。ミシュラン騒動によって、にわかフレンチ/イタリアン/寿司懐石天麩羅マニアが増えるだろうけれども、非常に結構な事だと思う。どんどん経験してほしい。

 ルミネのウインターシーズンのポスター。このモデルさん(名前も履歴も知らず)とスタイリス/ヘア/メイク/アートディレクターは結構好きで、筆者の携帯の待ち受けは常にルミネのポスター。ルミネは残念ながらHanakoでは紹介出来なかったが、フードフロア「meshi-mase」も、各セレクトショップもみんな素晴らしい。

 

 

懺悔の値打ちも無い

Nov-26-2007

 ワタシとともに「TOKION」を潰した(あの雑誌はワタシの特集をやり、その後が宇川さんの特集だったと思います確か・笑)天才、宇川直宏さんとの対談のゲラが上がって来たのですが、もともと5時間以上あったものに、宇川さんが物凄い加筆をして来たので、とんでもない長さの、とんでもない面白い物が届き、呆然としています。

 「nu」という左翼雑誌ですが、「一回での掲載はとても無理だ。分載にしないか」という提案があったのですが、何か、号と号の間がものすごおう空く事で有名な雑誌らしいので、何とか一回にまとめてもらう為、宇川さんが加筆した部分をワタシが毒算で削って、一回分にしてしまおうかとまで考えています(冗談ですよ。念のため)。

 忘れもしない今年の誕生日(6月14日)に観た、松本人志監督の「大日本人」評ですが、やはりあちこちで出版関係社に話してみた結果、どこにも掲載出来ないと解ったので、DVD発売記念にここに書こうと思っていたのですが、この「宇川×菊地対談」に入れてしまえ(「大日本人」の話をしている部分があるので)と思っています(ここにも書きますけれども)。

 さて、とうとう見つかってしまった。というのもフテブテしい事この上無いのですが、「ブルータス」の「映画コンシェルジュ」という企画で「ハッスル&フロウ」についてムチャクチャを書いた事が、町山智浩さんのはてな日記に指摘されてしまい、顔から劫火が放射される思いです。いやーやっちゃいました。ワタクシ多忙につき、この映画を見もしないで、評判だけで内容も知らず、知らない方に勧めてしまったのですが、内容に関して、知らずに書いたので大ポカをやってしまい、、、と書きたい所なのですが、流石にワタクシそこまで大物ではなく、ワタシのファンの方ならご存知の通り、ワタシはこの映画を劇場でも見ており、DVDも持っておりまして、川勝&下井草さんの「ポップカルチャー年鑑」の06年版でベスト映画に推薦しております。サントラ(米盤)も持っております。

 では何故、あんな事をしてしまったかというと、これが顔から火が出るほど恥ずかしく、穴があったら埋葬されたいほどの羞恥心で、こうしてキーパンチしながらもだっはははははー!!!と大爆笑してしまいたく成るほどバツが悪いのですが、あな恥ずかしや。実はちょっとあれは怒っておりまして(くー)、一種の怒りの表現なのです(ううううー)、「誰に何を怒っていたのか?」というと、これは御勘弁頂きたいのですが(もうまったく怒っていないので)、何であんな事に腹が立ったのか、自分でも頭がおかしいのではないかと思うのですが、とにかくあの時は死ぬほどムカムカし、かといって怒りをあらわにする事も出来ず、「ムチャクチャ書いてやれ。すっとぼけて」と、自爆にも似た意味不明な行動に出てしまいました。「恥ずかしい」のは、この「とった行動が意味不明(挙動不審に近い)。とはいえ自分的にはものすごおく解る」という点で、セルフ羞恥プレイの如し。他にも数作ルコマンデしていますが、他の物は普通にちゃんと紹介しています。
 
 「ううー。やってしまった。やってしまった。誰かに指摘される。絶対指摘される」と、怯えの様な、楽しみな様な複雑なキブンで過ごしていたのですが(事の全てを知っている)知人から「ウエイン町山が書いてたじょ」と言われ、「うひー」と成った。というお粗末。ブルータス誌及び「ハッスル&フロウ」関係者各位に深くお詫び申し上げます。恥ずかしいやら申し訳ないやらのままごきげんよう。

 

 

反応/プレゴにフルボトル入荷/天才とは

Nov-27-2007
 


どんなトピックもどんどん更新されて行くマルチトピックな当欄&マイ・メールボックスですが、本日は「ハッスル&フロウ事件」と「あのモデルさんの名前は太田莉菜です事件」で持ち切りに成っています(笑)。

 因にここ数ヶ月(オータム)でもっとも反応(メールボックス&友達からの電話)が大きかったトピックは(ライブの感想等は除く)

 1位 ユニヴァース降板(9/26)
 2位 パリでの推薦ビストロをご教示下さい(10/1)
 3位 ダブセクステットのジャケット公開(11/22)
 4位 Hanako発売(11/6)
 5位 パードン木村スタジオ(11/15)
 6位 蓮實重彦先生との対談(11/17)
 7位 パリから帰国(10/9)
 

 です。

 ひとことで「反応」と言ってもいろいろあり、ワタシはご存知の通りミクシィを始め、ネットものは何もやらないので、ワタシが「反応」と感じるのはファンメールボックスと、普段会う友人や仕事相手の方からの談話に限りますので、メディアによっていろいろな相を見せるのでしょう、例えば一連の「斉藤×茂木賭博」関連や、先日の「宇川直宏大量加筆」については「(ネットではちょっとした騒ぎになれども)まったく無反応」だったりする一方、「ブエノスアイレスで降雪」(7/12「鹿の庭で逢おう」)に多数の反応があったりします。因に今年最も多くの反応があったのは「DCPRGの活動終了」を除けば(これはまあ、騒ぎに成っても仕方が無い物件ですので)1/26「秋山事件に関する追補」と1/17「店は潰れ、歯は抜ける」でした。この時は結構凄かったですね。「前歯、抜けっぱなし希望」というメールがたくさん届いた時には、本気で抜けっぱなしにしようと思った程です。

 「<御勘弁願います>等と言わず、何で腹を立てたのか教えて下さいよ」という声を多く頂戴したのですが、いやあ本当に、自分バカではないかとしか思えないのですが「日本人/女性/文学者/<何だか知らないが、とにかく黒人が一杯出ている映像が観たい>」というリクエスト内容に、一瞬大ギレしてしてしまったのです(苦笑・本当に申し訳ない)。解答に「そんなん言うんだったらMTVのブラックミュージックPV観ればいいじゃん」みたいな事を書いてしまった事も反省しております。冷静に読み直せば、ワタシが怒る様な事は一切無い話であって、原稿を出した直後からすぐに反省した次第であります。

 太田莉菜さんに関しては、「菊地さんは日本人のモデル/女優さんに関して詳しいと思っていたので意外でした」というお声を頂戴したのですが、ワタクシ、モデルさんに関してはパリミラノ専門で(パリコレ取材時、初日の夜にビストロでワインを飲んでいたらサーシャが彼氏と一緒にすぐ近くの席に居て、ワタシが唖然としてついつい見つめてしまったら、スランス語で「ご機嫌いかが?(笑)」と言われ、すっかり舞い上がって「良いよ」以外何も言えなく成ってしまった。といった感じです)、不勉強ながら日本のモデルさんについて(赤文字系、モード系の区別なく)何も存じ上げず、「ああー、この人良く見るなあ」とか、そういうレヴェルなのです。基本的に、女性のルックスに関してはフェティッシュな好みは無く、博愛を自覚しているのですが、太田さんやKIKIさん系の「日系ロシア」的なルックスが好きなのかもしれません。ルミネの広告はアートディレクション&スタイリング込みでお気に入りなのですが。

 それにしても、まったく不思議な事ではないのですが「日本人女性で、日本人女性モデルのマニア」という方がたくさんいる事を今回、目の当たりにしました。皆さん優作(世代感をちょっと押し出してみました)ジュニアとのゴシップについて書いてらっしゃるので、珍しく日本人のゴシップに詳しく成ってしまいました(ゴシップに関してはワタシはハリウッド専門です)。

 本日はファッションニュースの連載企画で、「YLANG YLANG」のGM/デザイナーである青柳龍之亮さんと、青山のYLANG YLANGのショップ(因に、このショップを出て、そのまままっすぐ徒歩30秒で、ダブセクステットの衣装を作っている「クール・ストラッティン」があります)で対談させて頂き、連載の読者の方ならばご存知の通り、ワタシはランヴァンとイランイランの回し者かと言うほど両メゾンを褒めちぎり続けておりますので、青柳さんと御会いするのは僥倖でした。インタビュー中でもくり返し強調しておりますが、様々な業界がある中、「天才」と称しうる才能は一発でブレなく同定できるもので、「カンテサンス」の岸田シェフやイチロー氏と同じ匂いを感じ、、、、というより、青柳さん31歳、イチロー34歳、岸田シェフ33歳、ダブセクステットの類家くん31歳、と「<30代前半の天才>フォルダ」に入る方です。ワタシが思う天才の共通点は「着想が大雑把で、特に何も考えておらず、<そのまんま>な方法論なのだが、とにかく感動させる」事なのですが、本日のインタビューにより、青柳さんもズバリそのラインに居る事が解った次第です。12月号に掲載されますのでお楽しみに。

 「プレゴ・プレゴ」がタウラージやタンクレディを入れてくれるようになり、これで最強。フルボディ・ワイルド派としては舞い上がってしまいそうな感じです。リスタには入ってないので、同派閥の皆様におかれましては、「菊地さんのブログで見たのですが、7000円以上の価格帯のフルボディがあったら出して下さい」と言って、ばんばん抜いて下さい。ついさきほどまでプレゴに居たのですが、25時台にタンクレディをやっておりました所、銭湯の最後の客の如く、店内で飲んでいるのがワタシだけになりまして(実は現在、ベロンベロンに酔っております)、そこに中年の紳士と和服姿も艶やかな女性が二人で入店し、目が合った途端、「12月に伺いますよ」と仰ったので、タンクレディを一杯ずつ差し上げ、「オーチャードの幕間で出す銘柄です。よろしければどうぞ」と申し上げた所です。

 ワタシは本当のバカで、夜中においしい料理とワインをやっていると、たった今地球が滅びても構わない。何も問題ない。世界は素晴らしい(いろいろ手酷く、容赦ない事もあるけれども。それでも)と本気で思ってしまう方なのです。12/7ペペのチケットは残部僅少と成って参りました。あのホールで一番音が良いのは3階のパルコだそうで、ここがまだ余っていますから、要するに良席が余っているという状況です。ごきげんよう。

 

バロック

Nov-28-2007

 

 

 

本日からオーチャードホールのリハーサルが始まりまして、まずはペペ・トルメント・アスカラールからでしたが、みんなと会うのは(ダブセクステットのメンバーである)鈴木くんを除けば実に半年ぶり。そして次の公演でペペは第二期に入り、メンバーと編成を若干変えますので、「南米のエリザベス・テーラー」のリリース後、あのアルバムのリリースライブの為に結成されて以来、4年間に渡ってご愛顧頂いたこのメンバー(ペペは大儀見の隣に座るセカンドパーカッションがなかなか固定せず→大儀見が凄すぎて→また、今回すでに第一&第二ヴァイオリンが徳永&栗原さんではないのですが→お二人は年末のミュージカルの仕事によるスケジュールアウトですので、今回涙をのむ結果に相成りました)での演奏もこれで最後に成ります。

 「これで最後」などと言うと、一抹の寂しさが払拭出来ませんが、ワタクシ昨年から今年にかけてスパンクハッピーを解散し、DCPRGの活動を終了し、ペペの第一期を終え、来年1月22日にはクインテット・ライブ・ダブの解散(というのは大袈裟で、気が向いたら散発的にライブすると思います。ダブセクステットのアルバムをお聴きに成れば、<発展型>と言いながら、全然別モノであることがお解り頂けるでしょう)ライブを新宿ピットインで行いますので、言わばバンド的に全方位リニューアルという感じでしょうか。これも今年、ずっとマイルスの研究発表に取り組んでいた結果。等という面白くもない冗談は言いませんが、これは一種の嗅覚というかモットーなのですが、大事な決断は絶対に理詰め(頭で考えて)ではしない。というのがあり、「大事な決断」は「気がついたらそうなっていた」というのが、やはり最上であろう。という事で、内なる声が聴こえたら、その旨を関係者各位にちゃんと伝えて、どんどん行動するという事にしているので、冷酷で気まぐれのようですが、これはもうしょうがない。骨肉の争いによる決裂。という、よくある大迫力のアレをした事を経験した事が無いというオマケがついて来ますが(要するに、ベースの菊地君とは、これからも一緒に台湾マッサージに行ったりドライブに行ったり、金を貸したりすると思います。もう二度と失われてしまったのは、貸した金が返って来る。という事だけでしょう・笑)、とはいえ男たる物、仇敵と骨肉の争いもせで何をする。という考え方もあり、やはり善悪では判断出来ません、この体質は。

 いつも思う事は「とんでもない発明品を作ったな。何だろうこれは。本当に自分が作ったのか」という事です。作っている時にはとんでもないなどと思ってもいない。昨晩「花旗」を観たとき、DCPRGという組織がどんなに異形で強烈な物か、唖然としましたし、リップシンク期のスパンクスの映像を観るだに「何をやっているんだこれは。バカではないだろうか。素晴らしい」と、興奮にうち震えるのですが(過去、ワタシがメンバーとして参加したバンドも、そんなのばっかりです。この感じはファンの方々でないと解りますまい。単なる珍奇を衒ったガジェットではこんな気持ちには成りません)、どちらも既に何と言うか、「明治時代に、こんな変わった物があった」といった感覚なのですね。本日、オーチャードホール内にある大リハーサル室に入り、ペペの姿を目の当たりにし(本番中は見えませんので)、リハーサルが始まって「儀式」と「ルペベレスの葬儀」が演奏され出した時に「何だこれは」と、岡本太郎さんのような呟きを漏らしてしまいました。繰り返しますが、夢中で作っている時は「こんなの当然だろ。ちょっと在り来たりだけど、まあいいか」と思っているのです。本当に。

 最新発明がダブ・セクステットという事に成ります。「今までで一番オーセンティックでスタンダードなバンドだ。今度ばかりは永久にその考えは変わらないだろう」と思うのですが、本日「エスクァイア日本版」が届き、既に少々グラついています。「アルバムのレコーディングが終わり、まず最初の仕事が全員でアイウエアのモデル。アルバム発売よりも、デビューライブよりもそっちのが早い」という滑り出しは、ちょっと何か、既に何かが始まっている感じがします(笑)。

 という訳で、オーチャードホールをお楽しみに「良いも悪いも、演奏はこれで最後」とはいえ、現在のペペの仕上がりは(ヴァイオリン二人がサポートだという事を含めても尚)結成以来、最高の状態に熟成されております。ごきげんよう。




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 これも因果か、過去「メガネ男子」という、ミクシィ&萌え時代の象徴の様な素晴らしい名著を、礼儀も何も知らずに興奮しているだけの気色の悪いガキ扱いして(編集者を。です)、自分の記事と写真の掲載をカットさせた。という実に爽やかな履歴により(笑)、メガネ愛好家の世界から永久追放されているとばかり思っていたら、アイウエアのモデルをやってお金がもらえる日がやって来た。とはいえバチが当たり、あんまり似合っていない(笑)。

 メンバーのが遥かに似合っている。木村さんと坪口と類家君。

 珠也と鈴木君。この記事は松山晋也氏による、ダブ・セクステットのアルバムに関するインタビュー記事と、我々がアイウエア(メタルフレーム)のモデルをする。という企画の併せ技である(特集&表紙は「京都の味 探訪」08年1月号)。