13

2月

2012

弔い、そして仕事

 

 昨日「川勝正幸さんお別れの会」が青山葬儀所で行われまして、生まれて初めて弔辞なるものを読ませて頂いて、会場は日本最大のサブカル葬といった面持ちで、大変な数の方々がいらっしゃったのですが、ジャズシーンから来ていたのはワタシ一人だけという(スカパラさんというジャズ界と同盟関係にあるチームが居たので、そして、ワタシの弔辞の前がスカパラの演奏だったので、大分助かったのですが)鉄板アウェイの中、ワタシの不格好な弔辞さえ除けば本当に素晴らしい会で、中でも特に野宮真貴さんの歌と、ヤン冨田さんの演奏は、もう、ちょっとこれは、どうかしてる、というぐらいの素晴らしさで、神懸かりとはああいうものを言うのである。

 

 あとは、青山という地霊のなせる技なのかどうか、はっぴいえんどはやっぱハンパねえなという、ワタシのすぐ隣に松本隆さんと細野晴臣さんが数分間おかけになっていたのですが、ただおかけになっているだけでそれはもうとてつもないオーラで、そこにいる錚々たる面々を総て親戚のガキみたいにしてしまった訳ですが、これに比べたらジャズ界というのは本当に、ご隠居から与太郎まで長屋の花見です。忘れもしない昨年の夏、ダブセクステットがツアーに出ようという前日に、我々の仲間であった臼庭潤というテナーサックス奏者が亡くなった。葬儀はもう10代から70代までのジャズ関係者大会で、みんなで落ち込んだり笑いながらしながら、ナイスガイから始まり、嫌な奴、忌々しい奴、癪に障る奴、どうでも良い奴、バカ、キチガイ、嘘つき、ろくでなし、裏切りモン、こういった相互的な配置が、それでも総て結局だらしなく、全員がジャズメンという仲間で、全員が泣けるほど大切な大切な友達ばかりでして、当時、お酒を止めていらした南博さんが、「いやあ菊地くうん、今日ばかりはまあ、こういう場だからな。しょうがねえかな(微笑)」等と言いながら、実に嬉しそうに手酌でビールを注いでいるのを見るに、臼庭の霊もシリアスにならず、スインギーに浮かばれたに違いないと思うばかり。といった有様。

 

 とはいえまあ、当たり前の事ですが、弔っても弔っても心中の喪ちゅうのは簡単には明けませんで、一夜明けて今朝も、起きるなり「ああ、川勝さんがいねえんだな」と思いながら歯を磨き始めまして、ゴシゴシやりながら「ああ、好かれて愛されて死にたくねえな。憎まれてどうでもよくなって忘れられて死にてえもんだ」と思わずにいらねぬ程の巨大な喪失感、沢山の皆さんが悲しんで悲しんで、本当にこの東京という街は図体のでかいニヤニヤした髭面の天使を失った。伊藤俊治先生も仰っていたけれども、そもそもトゥイタリングというのは高周波に位置する小鳥のさえずりの莫大な集合であって、古来天使というのはそれを上空で総て聞き入れてくれた。その天使がいなくなってしまったら、莫大なトゥイタリングの塊は、co2のように成層圏にどんどん滞留するばかり、やがて生態系に影響を。と、柄にも無くエコロジカルな用語を使っちゃったりして。

 

 それはともかく前述の、ジャズ界が長屋の花見で居られるというのは、これはやはり「老人が老人として現役でいられる」という構造によるものでしょう。ポップカルチャーの最大のミッションは老いと死の隠蔽でしょうから、川勝さんが図らずも残されたメッセージはとても重くーーそれはもう、挑発的とすら言って良いと思います。老いや死から逃れる為の自死だった場合、それは老いや死の隠蔽を幇助する訳なので、ポップカルチャーに一撃は与えませんーー東京のポップカルチャーは、この痛烈な一撃を乗り越えて行かなくては成らない。

 

 過酷だなあ。「去年は凌ぎ、本当の闘いは今年からだ」等と申し上げて来たが、ポップカルチャーが実際にそうなってしまった。しかし、列席されている素晴らしいアーティストの皆さん(どなたが、どなたが、等と列記し始めたらキリがないほど沢山。皆さんがとても清潔で、シャイで、ワタシのような信用ならぬエイリアンにとても親切にして下さいます。嫌な奴だの、バカだの貧乏だのが一人も居ません)が必ずや乗り越えると、ワタシは信じています。ワタシは本籍はジャズ界においてますので、ピットインの店長、藤井フミヤ似でお馴染みの鈴木カンちゃんと魚民に行かなければならない(魚民のBGMはモダンジャズなので)、そこで竹野昌邦さんがジョーロバーノなんかよりも遥かに凄いのだ、もし竹野さんをノックアウト出来る人類がいたらそれはブランフォード以外にない、という話を最低でも3時間しないといけない。等々の過酷なミッションも悠々とこなしますが、片足ぐらいはポップにおいておりますので(この点のみマイルス主義)、ささやかながら出来うる限りの事はします。

 

 と、現在、DCPRGのレコーディングが大詰めに差し掛かっているというキワキワの状況下、もうひとつ別の大仕事をしていると前回申し上げましたが、更にそれと別に、これはもう贅沢極まりないアルバイトといった風情ですが、ワタシが唯一関わる事が出来るマンガカルチャーということで、現在、吾妻ひでお先生の選集を製作しております(4月刊行予定)。山本直樹氏による第一弾に次ぐ、第二弾という恰好ですので、アズマニアの皆様に於かれましてはお楽しみ&お手柔らかに(笑)ヨロシクお願い致します。

 

 渋谷慶一朗さんと太田莉菜さんのコンビによる「サクリファイス」も発売に成りました。ワタシは渋谷さんと連名で作詞にクレジットされていますが、スパンクスのように全部ガチっとワタシが作詞したものではなく、作業内容としては、ワタシはワードとラインを量産して、渋谷さんがそれをエディットされた。といった感じです。次の夜電波でスピンしようと思います。

 

 番組公式アカウントでもお知らせ致しましたが、次の夜電波は久しぶりの収録と成ります(オンエア日が、レコーディングの実質上の最終日となるので)。水曜の深夜に収録しますので、メールはそれまでに頂けると、番組に反映する事が可能に成りますのでよろしくお願いします。キラースメルスのデビュー盤「タラード1&2」は、この、収録回のオンエア終了から受注を開始します。予約受付の方法は番組で詳しく申し上げます。限定生産ですので、お聞き逃しなきよう。そして聖バレンタインデーはジャズドミューンで!ショコラお待ちしております!陵辱しますけどもね(笑)