12

12月

2011

ブルーノート4日間終了

 

 

 普段は疲れを知らない子供のよーうなーワタシですが、今朝笑いながら目が覚めたので何かと思いきや身体が動きませんで(笑)、何とか立ち上がってもフラフラしています。初日にDCPRG、終わって呑んで、WWDの連載書き(終了が早朝の6時)、二日目がキップの初日、後述する通り、始まる前から呑んで、終わって呑みまくり、酔い覚まししてから「粋な夜電波」の収録(終了が早朝の5時)、そのあと二日間キップたちとライブをやり(演奏するパートがどんどん増えて行き・笑)、最終日は得に終わって呑んで喰って騒いで、翌日がスタジオヴォイスのウエブ用にキップと対談、後述する様にウザいのなんの(笑)訳の解らない高級で詩的な英語を6時間ぐらい聴きながら呑んで喰って終了が早朝5時、明けて昨日が何とDCPRGのレコーディングです。笑って起きる筈です。

 

 演奏自体は何でも無い、日々の務めであります。飲み食いもまあ、日頃よりいくらか派手だったかな。という程度です。何が疲れたかと言えば、青山のど真ん中に居るのに三日間日本語がまったく喋れなかった事でしょうか。マイアさんは日本語を話しますがフランスとのハーフですから純日本人はワタシだけ。フランス人だけの、アートめいた音楽でもやるバンドであれば、こんなに疲れる筈は無い。ワタシは旧東圏のドイツ人プログレバンドと二ヶ月近くドレズデンに居た事がありましたが、疲れたのはむしろアイツ等のほうでした。要するにどれだけワタシがWBOのおしゃべり好きで食いしん坊の飲んべえだと言っても、ああした音楽をやる亡命キューバ人やプエルトリコ人やアイルランド系ユダヤ人やアルメニア人の強烈さにはとてもかなわないという事ですね。

 

 ファーストセット前、即ちクラブ入りしてから呑みは始まりまして、大体一人平均ワインを1本、ビールだったら小瓶を3〜4本ぐらい空けてからステージに向かい、終わるとお待ちかねディナータイムです。大量にサラダとパスタと肉を喰い、もう一人何本飲んでいるか解らない状態からチョコレートとコーヒーとラムをたっぷりとやり、以下がキモなのですが、常に2〜3人がワタシに向かってスペイン語訛りの英語で(本当に)1分間の休みも無くーーずーーーーーーーっとまくしたて続ける訳です。

 

 とはいえ結局話題は一つで「オマエのバンドは凄すぎるから、だからオマエは天才だからオマエのバンドはアメリカでも大成功するから、その時はオレを使え」つまり重要なのは最後の部分だけ。という訳ですが、とにかく、まあこんなにハッピーでジョイフルな拷問があるかね。といった風情。今でも彼等の、本当に美しい音楽の様な、スペイン語訛りの英語による、夥しい汚ない言葉たちがワタシの脳裏を飛び回っています。ほとんど意味が分かりませんから、純粋に音として残っている訳です。

 

 リッチーの可愛い事、オラシオの悪い事、ブランドンの清い事、悪いのはオラシオだけではない、言っちゃあ全員がブロンクスの悪童です。「キクーシ、オマエは大学院を出ているインテリだろう?」「ファック俺は高卒だよ!」「でも金持ちで山の上のマンションに住んでるだろ?」「俺が住んでるのはリトルコリアだよ!!」「イエー!キクーシ!キクーシ!アイラヴユー!!」デカい手でワタシのか弱い身体をバカンバカンに叩きやがって、打撲で死ぬかと思いました。

 

 とまあ、以下、話が前段から転倒する上に、はっきりとかつソフトに人種差別をしますが、ワタシは有色人種と一緒にいると心から癒され、活力が出ます。彼等は本当に悪い、特に演奏中の目はハンパではない。何かあったら盗るor殺す。という目で、目に見えないクラーヴェ(演奏に基準に成るパルスの事)に乗り続けています。神経系はハイになるばかりですが、ハートの中心部がうっとりします。産湯に浸かっている様な気分である。英語がちゃんと話せれば(それこそ、南博さんのように)、5年ぐらいニューヨークにいても良いなあと思うばかりですが、今の言語能力ではうっとりするばかりになってしまう。それでは命が危ないです。

 

 ワタシが知る限り、一部のはぐれ者やキチガイ(キップのような)を除けば、ですが、白人というのは、白人の癖して、なんだか半分ぐらい(ここが厄介な所です)日本人にそっくりです。前述のドレスデンにドイツ人などは、日本人の様だわ、日本人離れしてるわ(当たり前ですが・笑・特に身体のでかさ)で、かなり疲れさせたと思います。申し訳なかった。申し訳なかったなどと思うのは辛いものです。

 

 DCPRGの演奏後にキップがワタシに飛びかかって来て押し倒そうとしたので殺されるのかと思ったらいきなり額にキスをされ「(ちゃんと訳せているのかどうかまったく自身が無いのですが、恐らく)オマエのパリは美しい妄想だがオマエのアメリカは現実以上に成った。オレが明日のニューヨークを妄想にするかどうか、オマエのリズムなら解る」と、一体何が解るのやら、解るような解らないようなことを、もの凄い眼光で睨みつけながら言い残し、ガン!ガン!ガン!と三回ワタシを指差してから「明日が問題だ!」といって去って行きました。

 

 そしてクラーヴェ組の初日が終わると、ワタシの両肩をがっしと掴み「(これまた、ちゃんと訳せているかどうか以下同文)いいか菊地。これは滅多に無い事だぞ。今までで一番良い「ノーベイビー(ワタシがブランドンとオラシオと一緒にやった、スティーブ・レイシーの曲です)」の演奏を初日から聴いてしまった。完璧だ。完璧さは手強いぞ。明日からどうすればいいんだ。いいか、方法は一つしか無い。ミンガスが生きていたらオマエを離さない。だから、オマエがブランドンに続いて吹く。そのとき、ブランドンとオマエの精神的な距離が、いいか?精神的な距離だ。縮めろ。精神的な距離じゃない。サウンドそのものの中に潜在的に存在する、具体的な(以下5分ぐらい、もう外人にも解らない英語が連綿と)」とかなんとか、どうやら世辞めいた事を言っておきながら(ワタシを褒めれば、ワタシがネットに書いて宣伝してくれるとでも思ったのでしょう・笑)、翌日になったら「菊地、俺はイマジネーションを得た。(指先をグッとワタシの鼻面に近づけて)オマエのお陰だ」「そうか」「今日からオラシオと一緒にやって盛り上げろ」「なんだよそれダメ出しじゃねえか!」「違う。新しいイマジネーションだ」「どうやってやればいいんだ?」「そこだ!あのな。ブランドンが歌う。そこでオマエとオラシオが始める。(ここで、ものすごく芝居がかった感じになって、目をぎらつかせ、声を震わせながら)観客が全員<なんだあの二人は、いつまで関係ない事をやってるんだファック!止めろ!いますぐ止めろ!>と言うまでやるんだ。憎悪を煽る、そこに精神的な距離」「なんだそれファック」「そうだ!ファックだ。いいな!!菊地!オラシオ!!オマエラは最高のファックを引き出す!引き出すんだ!!距離を縮めろ!!」。オラシオはギャングスタのように歯を向いて笑いワタシの肩をスティックでポンポン叩くのみ、楽譜は、ネットから落としただけのピラっとした奴が一枚おいてあるだけで、何の説明も無し。

 

 耐性が無い方は「どんだけウゼえんだよその現場」と思われるでしょう。しかしワタシは、本当に、これは逆転した自慢でもリアルな卑下でもなく、単なる等身大の事実なのですが、こういう方が若干ながらですが、楽なのです。日本人は「ああ、そこすいませんもう一回お願い出来ますでしょうか。すみませーん。キメの所だけで良いんで。自分でーす」と言います。そして誰もが「大丈夫でーす」と言います。これが悪いとは言わない。我々の作法です。ワタシなどもっと酷い。楽譜を出してさっと説明しただけで演奏してもらい、あ、掴みかけたな。と思ったら「はい有り難うございましたー。すごーい。すぐ出来たなあ。さーすが」とか何とか言って終わりにしてしまうのです。誰もが物凄い不安な顔に成りますが、笑顔は絶やしません。

 

 対談の際、キップはワタシに「最初に教えてくれ。君のリハーサルを見た。あんなに複雑な事をやっているのに、君は誰も怒鳴らなかった。話さえしていなかった。ニコニコ笑って一緒に演奏しているだけだ。君はミュージシャンが最悪の演奏をしたらどうするんだ?喧嘩はいつする?」と言いました。ワタシは「喧嘩はしない。それが日本式だ」と答えました。「どういう事だ?」「日本人は、面と向かったら争わない。良くない事だとは解ってるよ」「でも君は、私が君を怒鳴っても何も言わずに黙って従った。しかも完璧にやった(またお世辞)。どうしてあんな事が出来る?」「いやそれが日本人なんだよ。というか、あなたは舞台の演出家だ。ワタシはサッカーのコーチで、しかも選手でもある。後ろを向いているから見えないが、試合中、声は出しているよ。頑張れ!そこでパスを出せ!いけ!決めろ!こうやって!!といったように」「サッカーは嫌いだろ」「演劇のがよっぽど嫌いだ。ジャズよりもずっと人気があるんだ日本では」とこの調子で、ウザいことこのうえないままで、何時間でも喋れる訳です。

 

 それでも朝方に成ると、隣のテーブルで喧嘩が起こり、若者が立ち上がって怒鳴るのを聞いて「私がユダヤ人だから嫌いなのかな彼は?」と真顔で言ったりするので「いやいやいや。日本人は人種差別はしない(←厳密に言うとウソ)。っていうか、日本人はアメリカ人かルーマニア人かの区別もつかないよ。彼等は金の事で揉めているだけだ。オマエとは関係ない」「金のもめ事!!関係あるさ!ホテルのミニバーの支払いが出来ない!みんなが私の部屋で飲んで帰る!どうすればいいんだ!明日アメリカに帰れない!」「オレだってデュークエリントンだってそうだよ!どうやってミニバーの飲み代を細かく清算するんだミュージシャンから。そうだ良い方法がある。あの小さな紙に、何も飲みませんでしたと書けばいいだろ」「書いたよ!でも、掃除の中年女がめざとく見つけて、全部書き込んでしまったんだ!彼女は何なんだ!」「子供を育ててるんだよ!!」「私の娘は活動家で、南米に行ったまま帰ってこない!!ミニバーが払えない!!」「そんなこったからこの公演でブルーノートが赤字に成るんだよ!(推測)」「やっぱりな。次はいつ君と会えるのかな」「4年後だ」

 

 愛機キャノンのIXYですが、肝心なときに電池がなくなり、バッテリー充電パックがどこかに行き(在り来たりな話です。さっき出て来ました)まして、大変なシャッターチャンスをいくつも失しました。写真集が出版出来たでしょう。ワタシが奇麗な女性だったりしたら尚更の事です。お越し頂いた皆様におかれましては御存知の通り、DCPRGにはクラーヴェの面々以外にも、新倉タケオ君とお母様が来てくれましたし(http://takeoyume.exblog.jp/)、クラーヴェ組は8年ぶりの、しかもマニアックな本物の来日、という事で非常にセレブリティが多い三日間でした。

 

 ヴィヴィアン佐藤さんは連日、川勝さん、湯山怜子さん、DCPRGからも丈青、ケンタ、大儀見、田中ちゃん、千住くんが、ペペからは林くんと早川くんが来てくれました。スカパラの谷中さん、DJのルイ・ヴェガ、批評家の岡村詩乃さん、EP-4の佐藤薫さん、カイル・イーストウッドとバンドのメンバー、ステージ脇で聴いていらっしゃった荒木(経惟)先生に「お体の具合は如何すか?」と聞くと「おう。これ(演奏)で元気に成るよ。へっへへ」とおっしゃいました。女優の美波さん、クリス・ペプラーさん、TOKUくん、そして空族(「サウダーヂ」の製作チーム)の富田監督にもバタバタながらご挨拶出来まして、ブルーノートのスタッフには「菊地さん、大変すみませんご面会は奥で、そちらお客様の導線になります」と叱られてしまいました。

 

 ジャズミュージシャンが、今や専修大学のアマレス部監督である須藤元気氏と同じメッセージを口にするというのはどうにもこうにも不格好ですが、我々はひとつなのです。より正しく言えば、本当に魂から感動すれば、それはもう既にひとつなのです。もしあなたが、おかしいなこんなに好きなのにひとつになっていない。と思うのならば、それは感動していない事を意味しています。だから感動すればよろしい。一番底の底から、我が身が消え失せるほどに。4日間のライブが終わりまして、一週間休み、また4日間いきます。お越し頂いた総ての皆様に感謝致します。それではまた。

 

 

*追記

 

1)キップは実際にチェックアウトでミニバーの支払いを断り、こうしたいつもの調子でフロントにまくしたてた結果、望み通り喧嘩になり、高見Pがトラブルシュートに向かいました。

 

2)当サイト内、のコンテンツ「クールストラッティン」内が更新されました。またしてもコラボ商品なんか作っちゃったりして!

 

3)次回の「粋な夜電波」は、予告通り近田さんと二人で話し、途中「タラード2」を聴いたりします。「タラード2」だけじゃないよ、勿論(笑)。

 

4) 更に翌週は裏送り1時間になるので「裏送り裏クリスマス特集」と題してお送りします。

 

5) 更に翌週、今年最後の放送は「レコード大賞を放映していない局のみに対して1時間」という特殊な枠に成るので、番組の初回(今年の4月)をまるまる再放送します。

 

6) これからWWDのパリコレの部とキネマ旬報の原稿を書きます。キネ旬は「エルブリ〜世界一予約の取れないレストラン」を扱います。